研究課題/領域番号 |
26400497
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山崎 智恵子(嶋田智恵子) 秋田大学, その他部局等, 研究員 (60597186)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 珪藻化石 / 白亜紀 / 古第三紀 |
研究実績の概要 |
本研究における主目的は,北海道北部に分布する白亜系海成堆積物より珪藻化石群集を記録し,報告することである. 平成26年度はまず,前年度より執筆を進めていた白亜紀珪藻に関する総説論文を学術雑誌「化石」に投稿し,受理・掲載された.この論文を作成することにより,白亜紀珪藻化石研究の現状や問題点,課題を整理することができ,今後の活動に非常にプラスになった. 白亜紀珪藻化石群集は,前期白亜紀(アプチアン~アルビアン)および後期白亜紀の中~後期(カンパニアン~マーストリヒチアン)の2つの期間の堆積物からは豊富に見つかっているが,白亜紀の中頃(セノマニアン~コニアシアン)の個体群については極めて報告が少ないうえ,あっても保存が悪く,特にアジア~環太平洋地域においては皆無である.本研究では,主たるフィールドである北海道北部中川町に分布するこの時代(後期白亜紀最初期)の佐久川層(セノマニアン)・佐久層(チューロニアン)より珪藻化石群集を見出した.この珪藻群集は黄鉄鉱や石英に置換することなく生物源オパール相を維持し,珪藻研究に耐える個体群であり,前期および後期白亜紀の代表的な優占種をそれぞれ含んでいる.この群集についての報告は,現在投稿準備中である. また,珪藻の進化史においては,白亜紀末期の生物大絶滅は群集組成にさほど大きな影響を及ぼさず,むしろ漸新世において劇的なターンオーバーが見られることがわかっている.本研究では,白亜紀~古第三紀に優勢ないわゆる「旧世界型」群集が北海道でも実際分布していたのかを確認するため,北海道東部浦幌町に赴き,中部漸新統縫別層を調査したところ,極めて保存の良い「旧世界型」珪藻群集を発見することができた.そもそも日本列島から古第三紀の珪藻を写真を添えて報告した例は現在までに2例しかなく,意義深いため,本年6月末の日本古生物学会で発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ,白亜紀および関連する(古第三紀)の珪藻化石群集を順調に発見できている.特に古第三紀珪藻化石を発見できたのは,実際のところは予想外であり,次に展開し得る大きな成果を得られたと思っている.そして成果も学会発表できているが,もう少し早いペースで論文を作成したい.
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今後の研究の推進方策 |
今後の小テーマとして,(1)白亜紀の中期(セノマニアン~チューロニアン)から得られた珪藻化石群集を学会および論文で報告する,(2)中川町の大曲層(サントニアン最後期~カンパニアン前期)から得られた珪藻化石群集について原著論文として国際学術雑誌で公表する,(3)北海道東部の古第三紀珪藻化石群集について記載と分類を進める,の3点を予定している. また,中川町に分布する白亜系試料のほか,暁新統(浦幌町)・(北海道中央部三笠市)始新統の各試料の入手も順次進め,北海道における「旧世界型」珪藻群集の系譜を鳥瞰しうるデータベースを構築していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の項目を,別途得ることができた民間の研究助成金から支出した.
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次年度使用額の使用計画 |
試料収集のための旅費として充当する.
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