最終年度にあたり,新たに認めた北海道産の古期(白亜紀および古第三紀)珪藻化石の産出報告を行った. 当初から検討している,北部の中川町産の後期白亜紀カンパニアン期の群集のほか,同セノマニアン~チューロニアン期の珪藻化石群集を得,分類群組成を得た.セノマニアン~チューロニアン期の珪藻化石群集を報告した例はそもそも世界的に極めて少ないが,編年の精度が低いか,保存が悪いかであり,事実上この時代の珪藻化石記録は皆無といってよい.しかし北海道においてはアンモナイト化石層序が確立しており,編年が非常に確かであるため,本研究の結果は極めて意義深いといえる.珪藻化石群集は,セノマニアン期とチューロニアン期の間で,非常に異なっていた.つまり,セノマニアン期の古い群集が絶滅し,顕著なターンオーバーが起っていた.この時期には海洋において異常な無酸素事件が生じたとされており,微細藻生物圏の変化との関連が疑われ興味深いが,さらなるデータの集積が必要である. この結果については,国際学術雑誌に投稿中(現在in revision)である.また,この件について,2017年1月に早稲田大学で行われた日本古生物学会において,口頭発表した. その他,東部の浦幌町に分布する古第三紀暁新統活平層から得られた含貝化石石灰質団塊から,北西太平洋において初めて暁新世珪藻化石群集を得た.この結果は現在,邦文誌に論文を執筆中であり,6月頃には投稿する予定である.
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