研究実績の概要 |
1.北太平洋域の白亜紀鞘形類の研究 御前明洋博士(北九州市立いのちのたび博物館)と生形貴男博士(京都大学)と共同で、北海道羽幌地域に分布する上部白亜系から産出したきわめて大型の鞘形類頭足類(イカ・タコの類)と思われる下顎化石2標本を多数の現生イカ・タコ類の下顎データと比較しながら、分類学・幾何学的形態測定学的に調べた。その結果、それらは原始的タコ類のコウモリダコ目に属するNanaimoteuthis属の新種とイカ類のツツイカ目の新属新種であることが判明し、国際誌に公表した(Tanabe, Misaki and Ubukata, 2015)。現生種での顎サイズと体サイズの関係を参考にすると、これらの化石鞘形類はきわめて大型で、とくにツツイカ目の新属新種は現生ダイオウイカに匹敵する体長(約10 m)を持っていたことが推定された。鞘形類は進化の過程で石灰質の殻が退化・消失したために化石記録が乏しく、現生分類群の起源や系統関係が長らく不明であった。本研究の結果、白亜紀後期の北太平洋域には大型海棲爬虫類やアンモナイト類などとともに現生型の巨大なイカ類やコウモリダコ類が繁栄していたことが明らかになった。 2.アンモナイト類の顎器に関する研究 世界各地の研究機関に収蔵されている住房中で自生的産状を示す標本に基づき、デボン紀から白亜紀にわたり栄えたアンモナイト類、8亜目、30超科、109属の顎器の基本形態、内部構造、鉱物組成をまとめ、顎形態の分類学的多様性、食性との関係、進化傾向についてまとめ、Springer出版社から刊行予定のAmmonoid Paleobiologyの10章に発表した(Tanabe, Kruta and Landman, in press)。このほか、西南日本の上部白亜系和泉層群から産出した上下顎を伴う異常巻きアンモナイトPravitocerasを米国古生物学会誌に記載・報告した(Tanabe et al. in press)。
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