研究実績の概要 |
1. 北太平洋域の後期白亜紀鞘形類動物群の研究 日本各地の博物館に収蔵されている化石標本に基づき、北海道の上部白亜系蝦夷層群からコウモリダコ目1属2種、ヒゲダコ目1属1種、および所属不明鞘形類の上下顎化石を記載報告した(Tanabe et al., 2017)。さらに本研究および棚部が行った先行研究に基づいて、北海道の蝦夷層群とカナダ、バンクーバー島の Nanaimo 層群から産する鞘形類の顎器および殻体化石群の時空分布を検討した。北太平洋以外の海域では白亜紀末期まで存続したべレムナイト類が北太平洋域ではアルビアン期に消失したことが知られている。本研究の結果、後期白亜紀の北太平洋域ではベレムナイト類を除く多様な鞘形類、すなわち現生トグロコウイカ目やツツイカ目に類縁の分類群およびコウモリダコ類、ヒゲダコ類などが繁栄し、コウモリダコ類の一部はカンパニアン期後期に北米内陸海にも分布を広げていたことが明らかになった。 2. 放射光X線解析装置を用いた現生・化石頭足類採餌器官の三次元構造の復元 アンモナイト類などの絶滅頭足類の化石は緻密な岩石中に保存されているため、従来の手法では殻体内部に残された複雑な形状をした軟体部器官の三次元的な構造を非破壊で明らかにすることは困難であった。そこで棚部は共同研究者と北海道上部白亜系産アンモナイトPhyllopachyceras ezoensisの住房内部に保存された顎器の形態と物質組成を、放射光X線マイクロCTを用いて解析した.その結果、多数のX線断層像および立体構築像の観察から、本種の上顎は大部分を石灰質に覆われていることが明らかになった。一方、下顎も先端部および外層に石灰質層が発達する。これらの事実から、本種は肉食または腐肉食に適した強い咀嚼機能を持っていたことが強く示唆された(Takeda et al., 2016)。
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