研究課題/領域番号 |
26400500
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
天野 和孝 上越教育大学, その他部局等, 副学長 (50159456)
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研究分担者 |
ジェンキンズ ロバート 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10451824)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 化学合成群集 / PETM / 古生態学 / 沈木群集 |
研究実績の概要 |
研究計画に沿いこれまで北海道浦幌町の暁新統活平層の地質調査を行い、貝化石の採集を行った。その際に、植物片を含む石灰質団塊中の貝化石の採集を重点的に行った。その結果、20産地より貝化石を採集できた。しかし、19産地はウラホロモミジソデボラを中心とする植物食の巻貝などからなる群集で、1産地から笠貝類、 ハイカブリニナ類、ハナシガイ類からなる沈木群集(化学合成群集)が認められた。新たに認められた1産地の沈木群集を含め、活平層からの沈木群集は4産地から認められることが明らかとなった。群集の構成については、白亜紀から発見されている沈木群集(Kiel et al., 2009)と同様に笠貝類、ハイカブリニナ類、ハナシガイ類が特徴的に含まれることも明らかとなった。また、種多様性も低いことが明らかとなった。これまでに暁新世からの沈木群集の報告例はなく、PETM以前の沈木群集の構成が初めて明らかとなったといえる。 沈木群集採集の際に世界最古のワダツミフネガイ類の新種(ウラホロワダツミフネガイ)を発見し、日本古生物学会年会で発表するとともに、学会誌に投稿し、受理された。また、沈木群集ではないが、エゾバイ科に属すると思われる新属新種(ウラホロミガキボラ)を発見し、論文化した。さらに、採集された貝化石中には白亜紀から生存し、PETM以降は知られていない貝類が少なくとも2種認められ、堆積物食二枚貝3種および巻貝1種の新種が含まれることも明らかとなった。 石灰質団塊の酸素・炭素同位体比を測定すべく、測定の対象となる試料を特定し、前処理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浦幌町の暁新統活平層の調査はほぼ終了し、貝化石の同定もほぼ終了している。また、その成果の一部を日本古生物学会の年会で発表した。貝化石の同定に伴って、炭素・酸素同位体比の石灰質団塊の選定を行ったため、測定試料の前処理段階までとなっている。しかし、本年度の目的とした暁新世の沈木群集の構成が明らかになった点で、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
北海道の夕張地域、天塩中川地域から知られている白亜紀の化学合成群集を採集し、群集の組成や構造を検討する。さらに、活平層の試料を含めた石灰団塊の岩相を検討し、炭素・酸素同位体比を測定する。北海道小平町の標本については、以前に採集した標本を使用し、夕張、天塩中川の群集と比較する。以上を通じて、PETM以前の化学合成群集の群集組成と構造を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張の旅費を当初多めに見積もっていたため。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費として使用の予定。
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