研究課題
研究計画に沿い、北海道浦幌町の補足的な調査を行い、暁新統活平層の沈木群集と北海道の夕張地域と天塩中川地域から白亜紀のメタン湧水群集を採集し、検討した。まず、活平層の42産地から沈木群集の産出が明らかとなり、以前にハイカブリニナ類と同定していた貝類はモミジソデボラ科の幼貝であることが明らかとなった。また、ツキガイ類、ハナシガイ類、笠貝類など化学合成群集に特徴的な種も含まれることが明らかとなった。また、原鰓類二枚貝の詳細な検討を進め、新種3種を含む11種が同定され、活平層の古水深が上部漸深海域であることが確実となった。活平層の沈木群集は始新世以降の地層から発見されている沈木群集とは、シンカイヒバリガイ類を含まないことでで白亜紀の沈木群集(Kiel et al., 2009)と共通していることも明らかとなった。一方、夕張地域の白亜紀のメタン湧水群集中にはハナシガイ類、大型のツキガイ類が含まれ、ハナシガイ類は新属の可能性があることも判明した。天塩中川地域の群集はツキガイ類が卓越している。論文としては昨年度発見したウラホロワダツミフネガイのほか、ハナシガイ類の記載論文が出版され、エゾコロモガイ類の最古の化石を発見し投稿している。このほか、浦幌町の前期漸新世のメタン湧水群集から保存の良い珪藻化石が発見され学会発表を行った。また、PETM後の群集との比較のため、新潟県、高知県の中新世のメタン湧水群集についても検討し、学会発表を行っている。
2: おおむね順調に進展している
北海道浦幌町の暁新統活平層の調査は終了し、貝化石の記載を進めている。暁新世の貝化石は日本からは報告されておらず、白亜紀と始新世以降の貝化石と比較する必要があり、時間を要する。採集した白亜紀の群集のクリーニングもほぼ終了し、同定を始めている。さらに、酸素・炭素同位体比の準備を進めており、計画はおおむね順調に進展している。
今年度は本研究の最終年度に当たるため、暁新統活平層の貝化石、夕張、天塩中川の白亜紀化石の同定を完了し、リストを作成し、群集構造を明らかにする。また、活平層の石灰質団塊の酸素・炭素同位体比を明らかにして、白亜紀や新生代のメタン湧水群集との比較を行う。さらに、PETMを境とした群集構成と構造の違いを総括し、その要因を考察する。
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