研究課題
2016年度までの研究で,東海沖の大型底生動物遺骸(貝類,腕足類,サンゴ類)の群集解析と50mDEMで作成された赤色立体地形図への地点プロットの結果,深海環境にも拘わらず,種の多様性が著しく高い地点が,伊豆諸島北部の小海丘上や遠州灘沖の渥美海底谷南西の陸棚斜面に認められていたが,本年度はそれらの地点から得られたサンゴ遺骸骨格および二枚貝殻の8試料について放射性炭素同位体年代の測定を行った.両地点から多産する冷水サンゴ類Goniocorella dumosaは深海サンゴ礁のフレームを構成する種として知られており,日本周辺海域における深海サンゴ礁の存在を検討する上でも,両地点の遺骸群集の堆積年代や堆積環境は重要である.なお,比較のために伊豆海脚上の一地点より得られた貝殻2試料についても同測定を行った.その結果,伊豆海脚上の地点が約1300年前および約5万年前と幅広い年代値を示す一方,冷水サンゴが多産する地点については約4.6-4.2万年前(伊豆諸島の小海丘上),約2.8-2.0万年前(遠州灘沖陸棚斜面)となり,いずれの地点も最終氷期の特定の時代に堆積したこと,とくに遠州灘沖陸棚斜面においては最終氷期最盛期とほぼ時代が一致することが特定された.これらの時代は現在よりも表層水温が低いことが鹿島灘沖のボーリングコアの研究によりすでに指摘されているが,本研究における遺骸群集中の貝類には親潮海域や中層水にしか生息しない種も認められており,寒冷な親潮の影響の強化があったことが推定される.東海沖の深海域に認められる種多様性の著しく高い遺骸群集は,寒冷期における陸棚斜面上層部で高い栄養塩類濃度に支えられていた可能性が示唆された.
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静岡大学地球科学研究報告
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