研究課題/領域番号 |
26400505
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
萩野 恭子 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 客員講師 (90374206)
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研究分担者 |
松岡 裕美 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (60222296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コッコリス / 円石藻 / 石灰質ナノ化石 / 下部有光層 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、熱帯~温帯の外洋の下部有光層の第一次生産を支える、円石藻の下部有光層植物相の形成過程を解明することである。具体的には、代表的な下部有光層生息種であるFlorisphaera 属とGladiolithus 属の円石藻のルーツを、化石記録と分子情報(18S rDNA 塩基配列)に基づいて検証する。平成27年度は以下の研究を行った。
1)Florisphaera 属とGladiolithus 属の化石記録の検証のために、高知大学海洋コア総合研究センターに保管されている、ODP Leg 115次航海によって赤道インド洋から採取された深海底コア試料から、新生代(Danian-Pleistocene)の堆積物を計282試料採取した。そして、全試料の光学顕微鏡観察用のスメアスライドを作成した。これらの試料のうち、これまでに、Miocene (Messinian) -Pleistocene のスライドの光学顕微鏡観察を完了している。
2)現生のFlorisphaera 属の分子情報の取得を目指して、高知大学の海洋調査船「ネプチューン」でニスキンボトルを用いて、土佐湾(高知県沖)の下部有光層の海水試料のサンプリングを行った。しかしながら、Florisphaera 属の個体数がいちばん多い8-9月には、船の予約日が荒天と重なり、沖まで出ることができず、やむを得ず沿岸でサンプリングを行った。十分に沖に出られなかったため、得られた個体数はFlorisphaera elongata が1細胞、Florisphaear profunda が5細胞と少なく、細胞の状態も良くなかった。結果として、Florisphaera 属の単細胞PCR に基づいた分子情報の取得と、培養株確立への挑戦の、両方に失敗した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化石記録に基づいた下部有光層生息種の研究は、おおむね順調に進んでいる。
分子情報に基づいた下部有光層生息種のルーツの研究は、悪天候のために予定の場所でサンプリングが出来なかったことが影響し、やや送れている。Florisphaera 属は8-9月に個体数が増えることが26年度の研究から分かっていたので、高知大学の調査船を8-9月に計3回予約していたが、船の予約日と荒天が重なって沖に出られなかったため、やむをえず沿岸でサンプリングを行った。現生のFlorisphaera 属の細胞を、合計6細胞を単離する事ができたが、もともと外洋種であるため、沿岸から見つかった細胞の状態は極めて悪く、個体数も不十分であった。結果として、分子・培養実験の両方に失敗した。
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今後の研究の推進方策 |
化石記録に基づいた研究では、本年度は、ODP Leg 115堆積物のうち、Paleocene-Miocene (Tortonian) の堆積物の光学顕微鏡観察を行い、Florisphaera 属とGladiolithus 属の化石の発出現年代を明らかにする。また、SEM観察に基づいて、Florisphara属とGladiolithus 属化石の形態学的研究を行う。さらに、追加試料として、University College London のPaul Bown 教授とJeremy R. Young 博士から保存状態の良いGladiolithus 化石を含むタンザニアの堆積物試料の譲渡を受け、化石の形態観察を行う。
現生種の研究では、悪天候によりサンプリングがキャンセルになることを見越した上で、今年は8-9月のサンプリング用の船の予約回数を増やす。そして、8-9月中に確実に沖までサンプリングに行けるようにする。そして、Florispharera属の分子系統学的な位置と出現年代を、18S rDNA 塩基配列に基づいて明らかにする。更に、Florisphaera 属とGladiolithus 属の分岐年代を、分子情報に基づいて推定する。
最終的には、Florisphaera 属とGladiolithus 属の化石記録と分子情報の両方に基づいて、円石藻の下部有光層植物相が成立した時期を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンザニアから採取された保存状態の良いGladiolithus 属化石を譲渡してもらうために、University College London (英国)のPaul Bown 教授とJeremy R. Young 博士を訪問する予定であったが、スケジュールが合わず、訪問がかなわなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度7月30日から8月6日にかけて、University College London(英国) のPaul Bown 博士とJeremy R. Young 博士を訪問し、Gladiolithus 属化石試料の譲渡を受ける。また、タンザニアの堆積物中の化石の同定や、形態解析についての指導を受ける。
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