数ナノメータサイズのフェリハイドライト(含水鉄酸化物、Fe2O3-0.5H2O)は、地球表層環境において有害元素の担体として機能する特性を持つ。通常鉱物が持たないこの特性は、潜晶質鉱物が有する通常の結晶とも非晶質とも異なる数ナノメータレベルの特殊構造(中距離秩序構造)に起因する。そこで本研究では、フェリハイドライトの構造解析に、X線異常散乱を利用した新しい構造解析法(AXS-RMC法)を導入し、ナノメータレベルの中距離秩序構造とイオン吸着機構の関連性を明らかにすることで、本鉱物の環境修復機能を積極的に利用する新しい材料素材の開発方針を提示することを目標とした。 本年度は前年度に継続してフェリハイドライトおよび関連する非晶質/潜晶質の構造解析を実施した。Ni-Fe-CO3層状複水酸化物について金属イオン濃度比(Ni/Fe)を変化させて合成するとともに高エネルギー回折実験による構造解析を行い、粒子サイズと中距離構造をPDFfitプログラムを用いた実空間構造モデリングにより評価した。粉末XRDパターンは、3価金属(Fe3+)の量比に比例して散乱ピークのブロードニングが大きくなる傾向を示した。Ni-Fe-CO3 LDH系鉱物のハイドロタルサイトの構造との比較からr < 0.9nm以内の中距離秩序構造はハイドロタルサイトと類似すると考えられる。しかし、r > 0.9nm以遠の長距離構造はハイドロタルサイトの結晶構造とは異なることが明らかとなった。
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