研究課題/領域番号 |
26400509
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
伴 雅雄 山形大学, 理学部, 教授 (50208724)
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研究分担者 |
大場 司 秋田大学, その他部局等, 教授 (10272014)
新城 竜一 琉球大学, 理学部, 教授 (30244289)
林 信太郎 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (90180968)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 火山 / 鳥海山 / 噴火史 / 地質調査 / マグマ / マグマ溜り / 岩石 / マグマ混合 |
研究実績の概要 |
鳥海山では紀元前466年に山体崩壊が起こったのち、それによって形成されたカルデラ(東鳥海カルデラ)内に溶岩が流出する活動が続いている。貞観地震前後のマグマ供給系の変化を見るためには、まず、これらの溶岩の噴出量の時間変化を求めることが基本となる。上記溶岩のうち新しいものについては、先行研究(古録調査・地質調査)によって、西暦871年と1801年の噴火及び両者の間の噴火によって形成された溶岩類であることが推定されている。 本年度は、赤色立体図によってカルデラ内の871年以前の溶岩について精密地形判読を行い、地形の保存状況を基にそれらを大きく3つに分類した。さらにテフラ層序研究の成果を参考に、3分した溶岩類の流出期間を推定した。各溶岩類の噴出量も見積り、それをテフラの厚さに応じて割り振り、噴出量積算図を作成した。その結果、871年噴火を境に噴出率が低下している可能性があることが判明した。また、西暦871年と1801年の間に形成された噴出物の年代を絞り込むため、古文書解析と古地磁気測定用の試料採取を行った。 871年以前の3分した溶岩類のうち、上部と下部の溶岩類の代表的な溶岩の試料採取を行った。その際、苦鉄質包有物も可能な限り同時に採取した。871年以降の試料は採取済みであるが、苦鉄質マグマの情報を得るために不可欠な苦鉄質包有物については一部量が足りないので補足採取を行った。 また、深部と浅部マグマ供給系のマグマの種類・配置・温度-圧力条件・マグマの混合-上昇過程を明らかにするために、採取した試料の岩石組織解析及び全岩化学分析(主成分、微量成分)を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、871年噴火以前の溶岩について、地形観察によって区分し、試料を採取すること、また871年~1801年の噴出物について補足試料採取を行うこと、採取した試料について岩石学的分析を進めること、さらに、古文書解析によって871年と1801年の間に起った噴火の時期を絞り込むことを目的とした。 871年噴火以前の溶岩について、地形観察を行った結果、大きく3分でき、また噴出量も推定できた。さらにテフラ層序の研究と組み合わせ、溶岩の噴出量の時間変化をおよそ推定でき、871年を境に噴出率が低下している可能性を指摘できた。試料採取は予定の8割程度を行うことができた。採取した試料について岩石学的分析を開始している。また、古文書解析については史料を再検討し、古絵図などから対象噴火の時期を絞り込んでいる。 以上よりおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに採取した試料の岩石学的分析を進める。27年度は西暦871年噴火以降の噴火のものの分析を完了させると共に、それ以前のマグマ噴火噴出物の岩石学的分析を重点的に行う。871年以前の溶岩類についてはさらに試料採取を行う必要がある。 得られたデータを基に、浅部マグマ供給系の温度-圧力条件・固化度および組成の時間変化、深部マグマの混合比や浅部マグマ溜り内での混合プロセス・混合~噴火までの時間、深部マグマの性質の変化を鳥海山の過去約2000 年間のマグマ噴火について考察を進める。得られた結果を基に、浅部・深部マグマ供給系の進化を解明する。深部マグマ供給系の進化解明の際には、深部での珪長質マグマの生成プロセスとタイミングにも着目する。 火山学会などで発表し、意見を受け改善に役立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者に配分したものについて、13,600円と26,763円の残額が生じた。これは残額分に相当する物品など適切なものが調達できなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
3年計画の1年目での分担者配分について残額が出たものであり、またそれは高額ではないため、次年度以降に研究に必要な物品の購入などで使用予定である。
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