研究課題
約6-5億年前の大陸衝突帯である東南極セール・ロンダーネ山地パーレバンデの塩素に富む流体の流入時期について分析と考察を深めた。その結果、泥質片麻岩の温度圧力履歴と微細組織形成過程の詳細な検討に基づき、昇温変成期に塩素に富む流体の流入があり、部分溶融の進行に伴い共存流体中の塩素濃度が上昇した可能性が高いこと、また、そのような流体活動は衝突境界の下盤側で起きたことを明らかにした。また、同山地における他の塩素流体活動も考慮し、複数回にわたる局所的衝突と塩素流体活動の関係をモデル化して示し、Lithos誌に出版した。また、流体活動のタイミングや起源を探る目的で、セール・ロンダーネ山地一帯の試料を用いて、流体活動に伴ってできたザクロ石の酸素同位体測定やザクロ石とジルコンのREEパターンに関する考察も進めた。また、塩素流体活動が認識されているリュツォ・ホルム岩体明るい岬において、電気石からコーネルピンが生じている試料について、エジンバラ大学でこれらの鉱物のホウ素同位体測定を行い、結果解析中である。さらに、同岩体スカレビックハルセンから、NaClに富むスカポライト脈の試料を見いだし、分析を進めた。これは、後退変成期に塩濃度が高い流体の流入があったことを示唆する。領家帯における広域変成作用と花崗岩類の貫入時期の決定をジルコンU-Pb年代測定を用いて昨年度に引き続いて行い、従来のモナズ石による年代測定では、花崗岩から放出される流体の影響によってモナズ石が若返るなどした影響のため、正しい花崗岩の貫入年代が得られていなかったことを明らかにし、領家帯における新たな変成深成活動史を提案した。柳井地域の成果の一部はLithos誌に出版し、三河地域の成果については国際誌への投稿準備を進めた。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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