研究課題/領域番号 |
26400514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小木曽 哲 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60359172)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 岩石鉱物鉱床学 / 地球惑星内部構造 / 初期地球 / 地球化学 / 高圧実験 / マグマ |
研究実績の概要 |
本研究は、地球形成直後の時代である冥王代初期に地球内部で起こり得たメルト生成プロセスの条件を、Sm-Nd同位体系を制約条件として求め、その条件で生成するメルトの主成分元素組成と密度を高圧実験とモデル計算で明らかにすることを目的としている。その結果をもとに、地球全体の平均組成として仮定されているCIコンドライト組成と、現在の地球のマントルの平均組成の推定値とのズレを説明するために想定されているhidden reservoirと呼ばれる隠れたリザーバーが、実際に存在し得たのか、存在したとしたらどういう条件で生成され得たのか、を明らかにすることが最終目標である。 昨年度までに、コンドライト隕石とマントルのSm-Nd同位体系のデータを用いて、コンドライトと現在のマントルとの間のNd同位体組成の差を補完できる組成を持つリザーバー(Early Enriched Reservoir: EER=hidden reservoirの候補)の生成条件(温度・圧力・部分融解度)を求めた。そして、求められた条件(7GPa・1750℃・部分融解度2%以下)におけるカンラン岩の高温高圧融解実験を川井型マルチアンビル高圧発生装置を用いて行って、EERの候補となるメルトの主成分元素組成を決定した。本年度は、引き続き高温高圧実験を行ってメルト組成を最終的に確定させるとともに、得られたメルトの密度をモデル計算によって求めた。その結果、初期地球のマントル上部で微小な部分融解度で生成されたメルトは、マントル中を上昇して原始地殻を形成すること、その原始地殻がEERすなわちhidden reservoirとなった可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧実験が、装置のトラブルもなく順調に行えたこと、メルトの密度計算に関しては昨年度までにその手法を習熟していたことが、研究が順調に進んだ要因である。
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今後の研究の推進方策 |
申請段階では、カンラン岩の高温高圧融解実験を含水条件でも行うことを計画していたが、含水条件での融解実験で酸素分圧をコントロールすることが従来行われてきた方法では困難であるとする論文が、昨年から今年にかけて相次いで発表された。そのため、当初の計画通りに含水高圧実験を行っても、その結果を初期地球に適用することができない、と、現時点では判断せざるを得ない。そこで今後は、含水条件でのEER形成条件の推定には高圧実験を用いず、熱力学的なモデリング等で代用することを検討する。
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