研究課題
COタイプの炭素質コンドライト(C隕石)は角礫岩化をほとんど受けておらず,その母天体は物質的攪乱のない,静的な天体と考えられてきた。しかし我々は,NWA1232 CO隕石が3種類のクラストを含むことを見出した。その内の2つはセンチメートルサイズであり,1つは多くのミリメートルサイズのクラストとして隕石全体に分散している。それら3種類のクラストはいずれもCOタイプであり,それらとホスト隕石の4つの岩相は,互いに熱変成の度合いが異なることがわかった。これらの結果は,CO隕石母天体には熱変成履歴の異なる多くの領域が存在したこと,そして,それら異なる領域の岩相が破砕され,天体内を移動し,互いに混合するプロセスがあったことを物語っている。さらに,ミリメートルサイズのクラストの産状は,それらのクラストとホスト岩相が流動状態で混合したことを示唆しており,代表者らが提出した隕石母天体内流動化モデル(Tomeoka and Ohnishi, 2015)に整合的である。ネフェリンおよびソーダライトは,C隕石母天体における変成プロセスを解読する上でトレーサーとなる鉱物として注目されている。我々はこれまで,ネフェリンが隕石母天体内で形成しうるかを検証する目的で,隕石中の前駆物質であるメリライトおよび斜長石の水熱変成実験を行って来た。本年度は,Caに富む灰長石の水熱変成実験を重点的に行った。その結果,以下の2つのことがわかった。灰長石からは,(1)高アルカリ条件で,ネフェリンよりもソーダライトの前駆的ゼオライトができる傾向が強い。(2)中アルカリ条件では,ネフェリン/ソーダライトの前駆的ゼオライトではなく,Si-Al-Na-Oに富む非晶質物質が生成される。これらの結果はいずれも予想外のものであり,C隕石の水質変成,熱変成に関して重要な制約を与える可能性が高い。
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Science Advances
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