研究課題/領域番号 |
26400516
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
土屋 旬 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (00527608)
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研究分担者 |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 含水マグマ / 自由エネルギー / 熱力学積分法 |
研究実績の概要 |
本研究は第一原理電子状態計算法と熱力学積分法を組み合わせた新たな手法を用いてマグネシウムケイ酸塩‐水系の相図を明らかにすることを目的としている。熱力学積分法は参照系と現実系の二つの異なる系の間の結合パラメーターを定義し、そのパラメーターを変化させ、参照系と現実系の間でポテンシャルエネルギーを積分することにより、参照系と現実系の間の自由エネルギー差を求めることができる手法である。ここで現実系のエネルギーを第一原理分子動力学計算により求め、参照系を理想気体やアインシュタイン結晶など解析的にエネルギーが求められる系とすることにより、対象とする系の自由エネルギーを求めることができる。 本研究ではまず、手法の確立のため、水と氷の自由エネルギーを求めることをマイルストーンとする。これにより、高圧下における氷の融解曲線や、これまで正確に決定することが困難であった含水鉱物の融解曲線を決定することができる。固相の自由エネルギーについては密度汎関数摂動論と調和近似を組み合わせた方法やアインシュタイン結晶を参照系とする熱力学積分法のプログラムを作成し、これまでのところ、MgOやSiO2の無水鉱物については融解曲線が実験と非常に調和的な結果を得ることに成功している。今後、課題となるのは高圧下で存在が強く示唆されている超臨界氷の自由エネルギー計算である。超臨界氷は酸素格子が体心立方格子をとり、水素が流体のようにふるまう状態である。現在、酸素格子の参照系をアインシュタイン結晶にとり、水素の参照系を理想気体にとったプログラムの開発に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は新たな手法開発も含む意欲的かつ挑戦的研究計画であるため、既知の系等においた手法の有効性の検証が不可欠である。本研究ではまず、手法の確立のため、水と氷の自由エネルギーを求めることを第一目標とする。現在のところ、固相の自由エネルギー計算を精度よく決定する手法開発に若干時間を要している。しかし、問題点については明確であるので、ひとつずつ解決していけば良いと考えている。一方で、液相の自由エネルギー計算については手法開発済みであるので、固相自由エネルギー計算方法開発と同時に、液相(水)の計算を実行し、問題解決と同時平行して成果発表に取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
まず、高温高圧下における水の自由エネルギーを決定する。これにより含水鉱物の融解曲線を決定する。特に、研究代表者が発見に貢献した高密度含水マグネシウムケイ酸塩鉱物のphase H(MgSiO4H2)について、融解温度を決定する。水以外の固相(phase Hと MgSiO3 Bridgmanite)の高温高圧下での自由エネルギーについては研究代表者がすでに論文発表しており、これと併せて含水マグネシウムケイ酸塩鉱物の相図決定が可能になる。その結果より、地球深部の含水鉱物の安定性について議論を展開する。 水の自由エネルギーを決定した後は、高温高圧下におけるマグネシウムケイ酸塩‐水系マグマの相図の決定に取り掛かる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額の生じた理由は、コンピューターの価格が当初予定していたものから変動があったためと、情報収集にかかる国内旅費が必要なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
差額は数万円であり、基本的な使用計画は当初予定と変わりはない。国内研究発表と情報収集のために旅費を使用する予定である。
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