本年度は、主に組織観察と鉱物・ガラスの化学分析を実施した。研究対象とした安山岩サンプルには、部分溶融した花崗岩ゼノリスが含まれる。花崗岩ゼノリスは、ホスト安山岩と直に接することはなく、両者の間に混合相が形成されている。さらに、混合相がホスト安山岩マグマと不均質に混ざりあったminglingの産状が、数mmから数10cmスケールで認められる。よって本サンプルでは、1)花崗岩ゼノリスの部分溶融、2)ゼノリス由来マグマとホスト安山岩質マグマとの混合(混合相形成)が生じ、さらに混合相とホストマグマとの間で均質化が進んでいると考えられる。なお、混合相の形成は、ゼノリスの部分溶融度が約50 vol%を越えた段階で生じたことが分かった。 ゼノリス由来の石英は、必ず単独でホストマグマへ分散していく。これは、部分溶融の初期段階で、石英の周囲が完全にメルトで覆われ、他の鉱物と完全に分離するからである。このことを利用すれば、ゼノクリストがホストマグマへ分散する機構を、ある程度推定できる可能性がある。ホストマグマ中に、石英ゼノクリストが単独相として存在する場合、その結晶は部分溶融を被ったゼノリスからもたらされた可能性が高い。一方、石英ゼノクリストが他の鉱物と集斑状をなす場合、それらの結晶は溶融をほとんど被っていないゼノリスの脆性破壊によってもたらされた可能性がある。 化学組成分析の結果、ゼノリス内に分布する不均質なガラス組成は、元素ごとの拡散速度の違いを反映していることが分かった。そのため、特にSiとAlにおいてガラス組成の不均質度が大きい。全岩化学組成のほか、ゼノリスおよび混合相の石基組成を用いることで、3つの組成変化トレンドを認識できることが明らかとなった。それは、ホスト安山岩の分化トレンド、ゼノリス内ガラスの拡散トレンド、混合相石基(ガラス±石基鉱物)の示すマグマ混合トレンドである。
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