研究課題/領域番号 |
26400518
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
桑原 義博 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90281196)
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研究分担者 |
石田 清隆 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (60108602)
上原 誠一郎 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70158773)
中牟田 義博 九州大学, 総合研究博物館, 准教授 (80128058)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AFM / 硫酸塩鉱物 / 重晶石 / 結晶成長 / 溶解 / 気候・環境変動 |
研究実績の概要 |
本年度の主な研究計画は、重晶石のAFM結晶成長その場観察実験の確立と、特に室温条件における過飽和度の異なる溶液中での重晶石の結晶成長の様式・速度・機構の解明、および、室温条件以下の低温(減温)条件でのAFMその場観察実験の開始であった。 新しい走査法である温度可変AFM法を用いた結晶成長その場観察法では、実際に、任意の温度条件を保持したまま、AFM液中セル内に過飽和溶液を流しながら種結晶表面上に新たな結晶が成長する現象をリアルタイムに観察できることが確認された。ただし、実験開始直前に作成した過飽和溶液と時間を置いた同過飽和度の溶液での実験結果が異なることがあった。実験に使用する過飽和溶液の取り扱いには注意する必要がある。これを踏まえて、温度30℃における過飽和度の異なる溶液(10μM~100μM硫酸バリウム溶液)中での重晶石(001)表面上で起こる結晶成長その場観察を行った。これにより、1. 同温度条件における結晶成長と溶解に関する詳細な比較・議論を行えるデータが得られたこと、2. 過飽和度の変化により、大きく3つの結晶成長様式に分かれること、3. 各々の過飽和溶液における二次元核の形成速度を決定できたこと、4. 各々の過飽和溶液におけるステップ前進速度や二次元核やスパイラル丘の成長速度を決定できたこと、などの結果が得られた。さらに、低温(減温)条件での実験も開始し、今のところ、過飽和度変化の範囲は狭いが、これまでに15℃までのデータが得られている。そのほか、室内実験結果との比較のために、気候変動等による硫酸塩鉱物、炭酸塩鉱物あるいはそれらの関連鉱物の天然での生成・溶解現象の変化に関する分析・解析も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究計画のうち、重晶石のAFM結晶成長その場観察実験の確立と、室温条件における過飽和度の異なる溶液中での重晶石の結晶成長の様式・速度・機構の解明については、実験・解析をほぼ終了しており、結果の一部は学会や論文等で公表し、また未公開のものについても現在論文を作成中である。室温条件以下の低温(減温)条件でのAFMその場観察実験についても計画通り実験を開始しており、データが得られ始めている。以上の結果を踏まえて、現在までにおける本研究の当初研究目的の達成度に関しては、おおむね順調に進展していると判断できる。 ただし、低温(減温)条件でのAFMその場観察実験の際、AFM液中セルの減温時にAFMピエゾスキャナーがそれに反応してしまい、観察像がドリフトしてしまうという新たな問題が発生している。現在は、減温速度を著しく遅くするなどして対処しているが、この種の実験でAFM装置を一人で操作するのはかなり難しい状況であり、このままであれば次年度以降の実験の遂行に影響することも考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画については、おおむね順調に進展している。ただし、現在までの達成度のところでも記したように、低温(減温)条件でのAFMその場観察実験の際、AFM装置を一人で操作することはかなり難しい状況である。特に、減温時におけるAFM像のドリフトは著しく、一人でAFM装置を操作している場合には、同一視野を保持しながら観察することが難しい。加えて、温度変化のモニタリングも重要であるが、上記のような状況の場合には対応できないこともある。したがって、今後、この実験を行う際は、本研究費の範囲内で実験補助(1名)を増やすなどの対応策を考えている。問題点ではあるが、実験自体は可能であり、実際にデータも獲得できているので、実験補助等の対応策を施せば無理なく遂行できる。 これらを踏まえて、当初の研究計画通り、次年度は、特に、低温(減温)条件における、幅広い過飽和度変化に対応したAFM結晶成長その場観察実験を進めていく予定である。また、炭酸塩鉱物の結晶成長その場観察を開始する予定である。同時に、気候変動等による硫酸塩鉱物、炭酸塩鉱物および関連鉱物の天然での生成・溶解現象の変化についても引き続き分析・解析を進める考えである。
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