研究課題
最終年度の研究計画は、硫酸塩鉱物(重晶石)に加えて、炭酸塩鉱物(方解石)の結晶成長及び付加的に溶解の機構と速度を顕微的に明らかにすることであった。重晶石に関しては、低温(10℃)から高温(40℃)における結晶成長その場観察を行い、特に成長速度の温度依存性と過飽和度依存性について、次のような新知見が得られた:(1)主要結晶成長機構の変化が起こる臨界過飽和度及びその時の成長速度が、溶液温度の低下とともに減少することが明らかとなった。(2)結晶成長機構の変化の影響が少ない低過飽和度条件では、[uv0]方向のステップの前進速度の温度依存性が確認でき、同じ過飽和度条件では、溶液温度が高いほどステップの前進速度が大きくなる。(3)それらの反応に対する活性化エネルギーを決定し、単独で存在するステップの前進と後退反応の活性化エネルギーがほぼ等しいことが解った。方解石に関しては、溶解で形成される四角錐状のエッチピットと結晶成長で形成される同じく四角錐状のスパイラル成長丘の成長速度について、次の新しい知見が得られた:(1)四角錐を作る4つのステップ(あるいは面)は、その後退速度及び前進速度に異方性が見られ、水平方向については、後退及び前進が速いステップはその過飽和度依存性が高く、速度が遅いステップでは過飽和度依存性が低い。垂直方向の後退及び前進速度は、水平方向のそれらの速度よりかなり遅く、過飽和度依存性も低い。(2)水平方向の結晶成長時の前進速度は溶解時の後退速度より速いが、垂直方向については、溶解時の後退速度より遅い可能性がある。また、室内実験に加えて、気候変動等によるそれら鉱物の天然での成長・溶解現象の変化に関する分析・解析も進め、これらの結果の一部は論文や学会発表等で国内外に公表した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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