研究課題/領域番号 |
26400523
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中井 俊一 東京大学, 地震研究所, 教授 (50188869)
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研究分担者 |
三好 雅也 福井大学, 教育地域科学部, 講師 (50557353)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 九州 / 火山 / ウラン‐トリウム放射非平衡 / スラブ流体 / スラブ溶融 |
研究実績の概要 |
本研究では,九州弧の火山が,島弧で一般的な沈み込むスラブからの流体の付加に起因する火成活動を起源とするか,あるいは沈み込むスラブの溶融によるアダカイト的な火成活動を起源とするかを,ウラン-トリウム放射非平衡分析から検討した.九州に分布する第四紀火山岩類のU-Th放射非平衡の空間変化を調査した.対象とした火山は,火山フロントに位置する由布岳,九重,阿蘇,霧島,開門岳,および背弧域に位置する雲仙岳,多良岳である. 今回分析した九州の火山岩の特徴の第一は,伊豆島弧に比べるとU,Thの濃度が高いことがある.伊豆島弧では,Th濃度は0.2~1.3ppmだったのに対し,本研究の分析試料は1~6ppmだった.また(230Th/232Th)の放射能比は,伊豆島弧試料(1.0~1.4)より低い物が多く,0.7程度の物が多かった.以上の分析結果は九州の火山の親マグマは,伊豆島弧に比べより大陸地殻物質の影響を受けていることを示す.マグマ上昇中の地殻物質の取り込みが多いこと,または沈み込む堆積物の量が多いことが原因と考えられる. (230Th/238U)比は,阿蘇,霧島などは1より小さい試料が多い傾向が認められ,これらの火山のマグマは,スラブ流体の寄与がマグマの生成の引き金を引く一般的な島弧火山の特徴を有することが明らかになった.九重,開聞火山の試料は(230Th/238U)比が1に近く,この値が1より大きなアダカイト的な特徴を持つ試料があるか現在も分析を続けている. 火山岩試料の(234U/238U)比については,1より大きな値を持つ試料が見つかった.同位体比測定精度を向上するための測定法の改良を行っており,引き続き分析を続ける.試料が雨水,海水や地下水による変質を受けていないかを含め,検討を続ける.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者が採取した九州の火山岩試料について,ウラン‐トリウム放射非平衡分析を開始した. 同位体比測定精度を向上することを目的として,200mg程度の試料を用いることを試みたが,研究代表者がこれまで用いてきたウラン,トリウムの,分離・精製法では,回収率が低下する試料があった.現在,分離・精製法の改良に取り組んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
岩石試料からの,ウラン・トリウムの分離・精製法を改良する試みを平成27年度にかけて続ける.分析法が改良したのちに,試料の再分析を行い,より精度の高い同位体データを取得する. 九州島弧の背弧地域にあたる福江島の試料も分析対象に加え,沈み込み流体の関与が無視できると予想される地域での,放射非平衡とウラン同位体比を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を計画した際には脱溶媒ネブライザーの購入を予定していたが,補助金の実際の配分額から新規購入が困難だったため,これまで使用してきたものを修理して使用している.そのため物品費が抑えられている. また研究開始時は,ウランの同位体比測定に233U-236Uの混合スパイクを使用したが,234Uの同位体比測定精度が低下することがわかり,分析法の再検討を行った.このため実試料の分析開始が遅れたため,物品費の使用が少なかった. 平成27年度に実試料の分析を行う際に,この補助金を使用する.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降に,実試料の分析を集中的に行い,その際に,高純度試薬やICP質量分析計の稼働のためのアルゴンガスの購入に上記の額を使用する.
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