研究課題/領域番号 |
26400526
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (10722837)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジルコン / 太古代 / 大陸地殻 / 酸素同位体 / SIMS |
研究実績の概要 |
海洋研究開発機構高知コア研究所保有の大型二次イオン質量分析計CAMECA IMS 1280-HRを用いて、カナダ・アカスタ片麻岩体の36~40億年前の花崗岩質片麻岩から回収されたジルコン試料の酸素同位体比分析を実施した。分析に際しては、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて結晶の保存状態(変成・再結晶化作用の有無)の評価を慎重に行い、ジルコンが36~40億年前に結晶化した際にマグマから獲得した情報を保持していると考えられる試料を選抜した。分析には2014年度に本研究課題に於いて確立した新しい局所分析用の標準ジルコン(KC-KLV-Zrc1、南アフリカ・カールバレー産)を用いた。 酸素同位体比を分析した結果、39.5~40億年前の火成活動に於いて大陸地殻に特徴的な高い酸素同位体比を持つマグマ形成が起きた事と、39.5億年前以降は継続的に高い酸素同位体比を持つマグマが形成されていた事が明らかになった。これらは、現在カナダ・アカスタ地域に存在する岩石が、約40億年前に形成された大陸地殻の一部である事を明らかに示している。また、初期大陸地殻形成のモデル地域と考えられる伊豆・小笠原・マリアナ島弧のジルコン試料についても共同研究を通して酸素同位体比分析を行い、比較検討を行う準備を進めている。 これらの研究の成果は、2015年度の国際会議(Goldschmidt Conference)と国内会議(日本地球惑星科学連合年会)で口頭発表を行ったほか、2016年度の国内会議(日本地球惑星科学連合年会)でも二件の発表を予定している。また、論文発表に向けて原稿の作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに高精度局所酸素同位体比分析手法の開発を完了し、アカスタ片麻岩ジルコン等の未知試料の分析を実施出来た。得られた成果と解釈を国際会議にて発表を行い、論文原稿の作成に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
伊豆・小笠原・マリアナ島弧のジルコン試料の酸素同位体比データの充実に努め、40億年前にアカスタ地域と現在の初期大陸地殻形成の異同について議論を展開できる様にする。酸素同位体比分析を重点的に行った結果として昨年度は実施する事が出来なかった局所希土類・微量元素濃度分析法の確立を行い、40~36億年前に起きたアカスタ片麻岩の母岩形成機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析器の効率的運用が奏功し、試料分析に要する消耗品費を大幅に低減する事に成功した。旅費についてはほぼ当初見積もり通りの支出であったが、初年度に海外渡航費用を抑制出来たため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度実施予定であった局所希土類・微量元素濃度分析法の確立で使用する消耗品の購入に充てる。また、国際会議での発表回数を増やすことで生じる旅費、論文の出版のための校閲費用等として使用する。
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