研究課題
平成28年度は(1)岩石全岩試料から二酸化炭素と希ガスを抽出・分離する手法と同位体測定データの信頼性の確認を行い、(2)前年度までに確立した二酸化炭素を含む揮発性成分の局所分析法を応用して、海洋島玄武岩に含まれる二酸化炭素濃度の測定を行った。(1)岩石中の二酸化炭素と希ガスの全岩分析については、前年度までに製作・改良した揮発性成分を抽出・分離する装置を実際に運用し、濃度の異なる複数の標準ガス試料を作成した。分離された二酸化炭素試料に対して、レーザー分光装置を用いて炭素同位体比を測定した結果、岩石中に含まれる微量の二酸化炭素量まで十分な精度で同位体比分析ができることを確認した。同時に抽出・分離された希ガスの濃度も問題なく測定できることを確認した。(2)上記の全岩分析と平行して、岩石に含まれるオリビン斑晶に内包されるメルト包有物を対象とした二酸化炭素の局所分析を行った。二次イオン質量分析計を用いてメルト包有物のガラスの部分の二酸化炭素濃度を定量する手法は前年度までに確立しており、それを南太平洋のライババエ島に産出する海洋島玄武岩のメルト包有物に応用した。ライババエ島には鉛同位体比の異なる二種類の火山岩が噴出しているが、両者の火山岩中のメルト包有物は異なる二酸化炭素濃度を示すことが分かった。このことから、両火山岩のマグマ源であるマントル物質は異なる炭素量を持ち、地球表層由来の炭素がマントルに存在する可能性が示唆された。これらの成果の一部は平成28年度の国際学会で発表し、また平成29年度の国際学会で発表予定であるのと同時に、国際学術誌に投稿するための論文を準備している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Nature
巻: 537 ページ: 666-670
10.1038/nature19113
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20160906/