研究課題/領域番号 |
26400529
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
副島 浩一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50283007)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 同位体効果 / 多価イオン / 低エネルギー衝突 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,3体系を対象にした近似を使わない第一原理的な量子計算で理論的に予測されている,低エネルギー領域での電荷交換反応断面積に現れる同位体効果,すなわち標的の質量の違いによる電荷交換断面積の変化の有無を実験的に検証することを目指していた.電荷交換反応で同位体効果による断面積の増大が実験的に確認されると,重水やさらに質量の大きな3重水素を使うDT反応のような核融合反応では,不純物多価イオンによる主プラズマ温度の低下が軽水の核融合反応に比べてより深刻な問題になり,今後の核融合炉開発の障害になる可能性が高いことから,この実験的検証は非常に重要である.そこで,理論計算と同じ条件である原子核2つと電子1つからなる単純な3体系を形成するHe2+とHおよびDの衝突系を対象にした,低エネルギー領域での1電荷交換反応断面積の測定を行った.その結果,実験室系で0.5keV~4keVのエネルギー領域でのHおよびD標的での電荷交換反応断面積の相対値の測定に成功した.これは,多価イオンとH,Dとの衝突反応で現れる同位体効果の実験的確認という意味で大きな一歩で,このエネルギー領域では電荷交換反応断面積に同位体効果が現れないことが確認できた.すなわち,残念ながら,この測定エネルギー領域では,He2+とH,Dとの運動学的相互作用の動径結合成分のみが有効に反応に寄与し,同位体効果出現の起因になる回転結合の効果がまだ反応に現れていないないようである.26年度に導入,試験運用した新技術のビームガイド法をより洗練させることで,28年度は0.5keV以下の低エネルギー衝突実験を実現し,3体系で理論的に予想されている電荷交換反応断面積に現れる同位体効果の存在を実験的に確定させる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度に実施を予定していた3体系;He2+H,D系での1電荷交換反応断面積の測定は0.5keV~4keVの衝突エネルギー範囲で測定できたが,同位体効果が観測できると予想される0.5keV以下の衝突エネルギーでの実験が実施できなかった.26年度に整備および試験をしたビームガイドの不調が原因である.具体的には,チェンバー内でのビームガイド本体への高周波印加用ケーブルの取り回し不良,特にグランドの取り方が悪かったことが主原因であったと予想される.また,ビームガイドを構成するMo棒の取り付け方法の設計が悪かったことによる棒同士の平行度の悪化も大きな原因の一つである.27年度はこれらの対応に時間を取られてしまったが,ステンレスメッシュを使いビームガイド全体をチェンバー本体と接続することで,しっかりとしたグランドをとった.また,ビームガイド本体のインピーダンスをネットワークアナライザーで計測し,高周波用同軸ケーブルの最適化をはかると共に,同軸ケーブルのグランドラインをチェンバーにしっかり固定することでケーブルのグランドもしっかりとった.さらに,ビームガイド本体のアライメント調整治具を作製することで,組み立て精度を向上させた.これらの対応によりビームガイドの性能がいぜんよりはるかに洗練されたはずである.
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今後の研究の推進方策 |
27年度に時間を費やしておこなったビームガイド法の最適化の成否を実験的に確認する.その後,ビームガイド本体前後に静電レンズ系を新たに設置し,ビーム入射軸とビームガイド中心軸のアライメントを電気的に調整可能な仕様に変更する.こうすることで,現在実験可能なエネルギー下限値の1000分の1となる0.5eVでの電荷交換反応断面積の測定を目指す.ビームガイドの性能評価の後,H2+H,D系を対象にした,0.5eV~4keVの4桁にわたる広いエネルギー範囲で,1電子交換反応断面積の測定を実施する.特に衝突系のポテンシャル局面のHidden交差付近において回転結合効果が動径結合効果を上回ると予想される100eV以下の衝突エネルギー領域で詳細で系統的な測定を行う予定である.それによりまず,3体系での同位体効果の存在を実験的に確定する.さらに,より複雑な多体系でも同じ現象が生じるのか,Hidden交差における電子遷移計算法をつかった理論的な電荷交換反応断面積計算をおこなうと共に,入射イオン種,標的を系統的に変え実験的に電荷交換反応断面積の測定を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度3月納入のガス導入系用チェンバーの作成費用の一部として処理済みであるが,伝票処理の遅延のため,収支簿に反映されなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
本差額はすでに使用済みであるため,伝票処理が完了すると共に差額はなくなる.
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