研究課題/領域番号 |
26400531
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
李 継全 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (00437253)
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研究分担者 |
岸本 泰明 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (10344441)
今寺 賢志 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90607839)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 位相空間構造 / ジャイロ運動論 / ITGモード / 磁気島 / 共鳴高周波加熱 / プラズマシミュレーション |
研究実績の概要 |
H27年度は、ジャイロ運動論モデルを用いて、磁場閉じ込めプラズマにおける1)三次元共鳴磁気島と乱流間の多階層線形相互作用及び2)外部加熱による位相空間における構造形成に関するジャイロ運動論理論の研究を実施した。 1)微視的乱流輸送過程を解析可能なジャイロ運動論的ブラゾフコード(GKNET)を用いて、外部から共鳴磁気島が印加されたITGモード不安定性の解析を行い、磁気島と乱流の相互作用を解析した。三次元ヘリカル共鳴磁気島モデルを構築し、共鳴磁気島が印加されたITGモードシミュレーションを行うことで、プラズマ圧力が準線形的に平坦化されることを再現した。また、磁気島がITGモード構造を局在化することでその安定化に寄与することも新たに見出した。その要因としては、磁気島中の密度分布の平坦化が大きく寄与しているものと考えられる。さらに、共鳴磁気島と非共鳴摂動磁場に対するITGモードの応答を比較した結果、後者によって印加された磁気島はITGモードを安定化せず、三次元ヘリカル摂動磁場によるトロイダルモード結合が発生することを見出した。 2)プラズマ位相空間における構造形成や乱流との非局所相互作用を積極的に選択することを目指し、異方性加熱手法の一つとして共鳴高周波加熱を用いてプラズマ応答を説明するジャイロ運動論理論を構築した。イオンサイクロトロン共鳴高周波中での粒子運動を記述する非正準Lie摂動論に基づくジャイロ運動論理論モデルに関する研究を進展させ、共鳴波に対する磁気モーメントが時間に依存する新しい一次元ラグランジュ形式を導くことに成功した。また、この理論を同定するシミュレーション手法を検討し、それにより、この新しい共鳴理論に基づく数値シミュレーションの時間消費に関する利点を評価した。さらに、GKNETコードに対して衝突モデルを導入し、位相空間の構造生成に対する衝突の影響を評価する研究を進展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位相空間における構造形成や無衝突エネルギー伝達過程が、近年核融合プラズマの分野で注目されている。従来、乱流輸送は実空間における大規模構造(帯状流など)を考慮して輸送フラックスを計算する。本研究は、位相空間構造および実空間乱流構造との相互作用を取り入れる斬新で挑戦的な非局所乱流輸送モデルが求められる。 この計画によって、H27は、共鳴高周波加熱を用いてプラズマ応答を説明するジャイロ運動論理論を構築するとともに、三次元ヘリカル共鳴磁気島と乱流間の多階層線形相互作用に関する物理メカニズムの解析の進展に努めた。特に、サイクロトロン共鳴波に対する成功に導く磁気モーメントが時間に依存する一次元ラグランジュ形式は、今後の異方性加熱手法を用いてGKNETシミュレーションで位相空間における構造形成および輸送制御に関する研究展開の基礎を築くものである。また、三次元ヘリカル共鳴磁気島と乱流間の多階層線形相互作用の解析結果は後に開発を行うMHDとマイクロスケール摂動を入れたマルチスケールシミュレーションの起点となるものである。 以上から、H27年度は、予定通りの順調な進展であると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)トロイダル配位における理論/数値解析、位相空間構造の積極的選択方法の開拓:H27年度の研究を続いて、スラブ配位における位相空間プラズマ乱流と構造形成に関する理論/数値解析を継続して行う一方で、GKNETコードを用いて、トロイダル配位での解析を行う。さらに、共鳴高周波加熱や中性粒子ビーム加熱などの異方性加熱効果をトロイダルコードに実装し、位相空間における構造形成や乱流との非局所相互作用を積極的に選択する方法を検討する。 2)シミュレーションによる理論モデル検証、プラズマ乱流実験の再現:実験データの収集を継続して行う一方で、定式化した非局所乱流輸送モデルの妥当性を、ジャイロ流体、およびジャイロ運動論的シミュレーションを行うことで検証する。さらに、シミュレーションでプラズマ乱流実験を再現し、将来の核燃焼プラズマにおける非局所乱流輸送を制御する手法を開拓する。
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