研究課題/領域番号 |
26400532
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長友 英夫 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 准教授 (10283813)
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研究分担者 |
砂原 淳 公益財団法人レーザー技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00370213)
城崎 知至 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10397680)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 輻射流体力学 / MHDシミュレーション / 強磁場発生 / 爆縮 / レーザープラズマ |
研究実績の概要 |
前年度開発したシミュレーションコードを用いたシミュレーション解析、および妥当性検証を中心に行った。今年度は、圧縮した磁場中に高速電子ビームを発生させ、その電子ビームが磁場によってガイドされることを示すための、磁場の圧縮と高速電子ビーム輸送を組み合わせた統合シミュレーションを実施した。 まず、前年度完成させた2次元輻射・抵抗性磁気流体シミュレーションコードを用いて、初期磁場を与えたターゲットをレーザーで爆縮する磁場圧縮のシミュレーションを行った。その結果、外部磁場を与えた中実球ターゲットに圧縮用レーザーを照射することによって、磁場が数倍に圧縮できることが示された。 続いて、この圧縮された磁場を含む、物理量の分布を2次元相対論高速電子ビーム輸送コードに渡し、磁場中の高速電子ビームへの影響を調べた。1キロテスラ以上の初期磁場を与えた場合、相対論高速電子は圧縮された磁力に沿って輸送され、数メガ電子ボルトの高速電子はガイドされ、高密度爆縮コアに吸収されることが示された。実験的には、この電子の分布を計測することによって磁場の圧縮が確認できることから、阪大レーザー研での実験提案を行っている。 一方、プラズマ中では、磁力線に横切る方向の電子運動は抑えられることから熱流束は抑制される。すなわち、電子熱伝導係数は減少する。輻射流体シミュレーションでは電子熱伝導係数のモデルを導入しており、アブレーション構造はそのモデルの影響を直接受ける。ここで用いているBraginskiiモデルは多くの場合でその妥当性が示されているがアブレーション領域での妥当性検証例はほとんどない。そこで電磁粒子シミュレーションコードを用いて検証を行った。その結果、最大で30%程度のずれる場合があることが示された。今回の結果は、最近のJi&Held(PoP, 2013)の検証結果と一致することから、モデルの修正等を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輻射流体シミュレーションによる磁場の圧縮、および圧縮された磁場中の高速電子の運動に関する相対論高速電子ビームシミュレーションに関しては、順調に進行している。また、それらから得られた結果と実験結果との比較も順調に行われ、国際会議発表、論文化も進んでいる。一方で、キャパシターコイルによる磁場の発生のシミュレーションについては、コイルが溶融、プラズマ化する部分の解析が鍵となる。これは、いわゆるWarm Dense Matter (WDM)に関わる問題で、状態の変化が伝導率、磁場の拡散に大きく影響を及ぼすことから、シミュレーションによる予測が重要であるものの解析手法の確立が遅れている。ただし、実験の計測手法の進展により発生磁場が比較的高い精度で測定できるようになってきた。このため、統合シミュレーションなどでは、磁場発生部分を切り離し、実験データを元に解析を進めている。WDMを含めた磁場の発生部分は次年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に行った電子熱伝導係数モデルの妥当性検証の結果を受けて、輻射流体コードのBraginskiiモデルを改良するとともに、流速制限Spitzer-Harmの熱伝導係数との整合性について検証を行う。 昨年度、本研究の応用研究として、レーザープラズマを用いた磁気スラスター開発を行っている実験グループと協力し、実験の数値解析からコードの妥当性検証に着手した。ここでは、磁場圧縮、および磁気圧等による流れの変化を、トムソン散乱計測に測定できることから、シミュレーションとの十分比較検証ができると判断した。これまでの、爆縮実験による磁場圧縮、高速電子ビーム制御と合わせて解析を行う。コードの妥当性を示すとともに、応用分野として研究を展開する。 また、難航しているキャパシターコイルでのアブレーションによる磁場発生について、WDM領域の物性計測を行っている研究グループとの議論を進め、妥当なモデリング開発等によって、磁場発生の精度を高めた上で統合シミュレーションに組み込む。 これらの研究の総括として、再度統合シミュレーションを実行し、実験結果との比較を通して、シミュレーションの妥当性を示し、本研究をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の学会参加時の旅費について、当初予定していた金額より安い航空券を購入することができたため残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費等の調整用として使用する予定。
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