本研究の目的は、超高強度レーザー電磁場を円偏光にすることで、レーザー照射により発生する高速電子がレーザー伝搬方向に振動する運動:クイーバー運動を抑制し、高速電子の低温度化(コヒーレンス向上)を試みることである。具体的には、円偏光/直線偏光レーザーをターゲットに照射した際の高速電子スペクトルを計測し、相対論的な強度を有するレーザー強度における円偏光電磁場に対する新たな高速電子温度のスケーリングを見出すとした。 最終年度である本年度は、円偏光光学素子で超高強度レーザーの偏光を制御し、レーザーを固体金属へ照射する実験を行い、偏光の違いによる高速電子スペクトル実験結果の取得をおこなった。具体的には、新たに導入した電動回転機構に入荷済みであった円偏光制御素子を装着し、真空環境課において、レーザーの偏光制御をおこなった。また、昨年度までに整備した高速電子スペクトロメータを用いて100ショット積算における高速電子スペクトルを得た。 実験結果は以下のとおりであった。(1)波長板の導入により、高速電子信号をあらわすPSLのslopeは、0.9 MeVから0.25 MeVに低下し、slopeについては、偏光の違いは現れていない。(2) 一方、円偏光では、低エネルギー(0.3 MeV付近)の高速電子成分が増大しており、これは、波長板導入前と比べても顕著であった。 円偏光により、低エネルギーの電子成分が増えた結果は、プラズマを効率よく加熱できることを示唆している。
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