研究課題/領域番号 |
26410003
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥津 哲夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20261860)
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研究分担者 |
堀内 宏明 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00334136)
高橋 浩 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80236314)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膜タンパク質の結晶化 / 脂質 / 光誘起相転移 / 光異性化 / バクテリオロドプシン |
研究実績の概要 |
モノオレインを脂質とした脂質/水の相にアゾベンゼン骨格を有し、光異性化反応を起こす化合物(AZTMA)を加え、光照射による立方相からラメラ相への光誘起相転移に成功した。ラメラ相中で膜タンパク質が結晶成長することが報告されているので、バクテリオロドプシンを膜タンパク質として加え、光相転移させたラメラ相中で結晶化が進行するか試みた。その結果、膜タンパク質の存在により立方相/ラメラ相の相図が変化することが判明し、光誘起相転移を起こさせる条件が変化することが判明した。モノオレイン/水/膜タンパク質/AZTAMAの比率をコントロールすることにより、光誘起相転移を起こさせた。 しかしながら、相転移によって生じたラメラ相でバクテオリオロドプシンは結晶化しなかった。その理由として、①バクテリオロドプシンの存在により脂質がラメラ化してしまうために、バクテリオロドプシンの濃度を結晶化が確認されている16%から4%に減らしたため結晶成長の駆動力が低下した。②相転移を光のみで行うために電解質を取り除いて結晶化実験を行ったが、タンパク質の凝集力が足りなくなった。の2点が考えられた。 そこで、電解質を加えタンパク質の凝集力を保持させて、光誘起相転移を起こさせ結晶化させる実験に臨んだ。電解質としてリン酸塩を用いたが、リン酸塩が存在すると光誘起相転移が起こらなくなることが判明した。この原因はリン酸塩が脂質の相を固くする作用を持ち、相転移の活性化エネルギーを高めるためと推測した。 今までの実験結果より、脂質/水/AZTMA系で光誘起相転移を実現することができたが、膜タンパク質と電解質が共存すると相転移が起こらなくなるという問題点に直面している。 結晶化の実現を急ぐのではなく、何が起きたのかを一つ一つ明らかにし問題の解決を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進行していると判断した理由は、光誘起相転移が起こせることを示し、X線散乱実験でも確認できたことによる。さらに、膜タンパク質を加えると相境界が変化するため最初に成功した光誘起相転移条件と異なる条件を検討することになったのは想定内である。また膜タンパクが存在する条件で相転移が成功しても結晶化が起こらないという問題に直面しているが、膜タンパク質の結晶化が簡単に成功するとは考えていない。 光誘起相転移の機構が、AZTMAが光で形を変える仕組みを利用したものであり、この系に膜タンパク質のような形の異なる物質を加えれば相境界の条件が変わるのは予想されることである。
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今後の研究の推進方策 |
今までの実験結果より、脂質/水/AZTMA系で光誘起相転移を実現することができたが、膜タンパク質と電解質が共存すると相転移が起こらなくなるという問題点に直面している。 結晶化の実現を急ぐのではなく、何が起きたのかを一つ一つ明らかにし問題の解決を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
563,242円の未使用額が発生した。定期的に購入すべき消耗品として例えば超純水のフィルターを年度末に購入すれば使い切ることができたが、次年度に国際学会の出席を次年度予定しており、その参加登録費を確保するために、年度末の使い切りを行わなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会の出席のための費用として予算を計上する。また、定期的に交換すべき消耗品の購入を行い昨年度の余剰分は使いきる。
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