研究課題
膜タンパク質としてバクテリオロドプシン、脂質としてモノオレイン、電解質としてリン酸Na/K、脂質相の光誘起相転移を誘起するプロモーターとしてアゾベンゼン基を含む界面活性剤(AZTMA)を用い膜タンパク質の光誘起結晶化実験を行った。脂質の相転移は電解質濃度、水分量、温度などの変化で起こるが、本実験では電解質濃度、水分量、温度などの条件を一定にしたまま相転移が光によるAZTMAのtrans→cis異性化反応のみで起こす実験方法を構築した。脂質を用いた結晶化方法はLCP-Sandwichプレートが用いられているが、水分の蒸発などの問題があるため使わずに、キャピラリーに脂質/膜タンパクを詰め込む方法を構築した。その結果、光を当てた部分にだけ立方晶→ラメラ相の変化をおこさせることに成功した。相転移前の立方相と光照射後のラメラ相の低角X線散乱測定を高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーで行った。その結果、立方相はLa3dであり、光当てるとラメラ相の散乱が測定された。脂質/バクテリオロドプシン/電解質/AZTMA系で光誘起相転移による結晶化実験に取り組んだ。バクテリオロドプシンを加えるだけで光を当てなくてもラメラへの相転移が起きてしまう問題が判明し、バクテリオロドプシンの濃度を下げ調整し、光を当てた時のみラメラ相への相転移が起こる実験条件を探索した。このとき、バクテリオロドプシンの濃度は定法で行う結晶化条件の1/5の濃度であった。この条件で光誘起相転移による結晶化実験を行ったが、結晶は出現しなかった。この理由を考察したところ、膜タンパク質が存在するだけで転移が起きてしまうことが判明し、光のみで相転移をさせる条件が設定できなかったことが明らかになった。光のみで相転移を起こす条件の検討を進めるとともに、AZTMAの光異性化と相転移の基礎的観察を進めた。
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