核磁気共鳴(NMR)法は、分子・原子レベルの構造や動的挙動に関する貴重な情報を研究者に提供できることから、化学の研究分野において必要不可欠な分析ツールと言える。しかしながら、従来の測定核はプロトン、炭素、窒素など少数の核種に偏っている。本研究では、従来のNMR装置では測定することが困難、もしくは不可能であった核種、例えば、硫黄33安定同位体やハフニウム179安定同位体を測定することが可能なNMR装置を開発した。特にゴム中の硫黄原子を測定対象とするNMR測定では、今まで解明できなかった硫黄原子によるゴムの架橋構造に関する重要な知見を得ることができた。これらは一例ではあるが、測定核種の制限を取り払うことができることで、特に無機化学者に貴重な分子および電子情報を提供することが可能になる。
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