研究課題/領域番号 |
26410009
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊藤 冬樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80403921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶生成過程 / 蛍光スペクトル / 結晶多形 / 分子ダイナミクス |
研究実績の概要 |
結晶生成過程や結晶多形に関する詳細な知見は,生体中における溶解性を制御した医薬品などの結晶材料の合理的製造プロセスの開発,また基礎的には相安定性や分子間相互作用の解明の観点から重要である.本研究では,これら多形を引き起こす結晶生成過程の基礎的知見の獲得のために,濃度および蛍光変化を同時観測できる蛍光顕微鏡測定システムを開発し,会合誘起発光と多形を示す分子系を用いて多形発現過程と蛍光変化から得られる局所濃度の相関,またその時間依存性に関する知見を獲得し分子ダイナミクスに基づく結晶成長モデルを構築することを目的とする. 平成26年度は,主に溶液蒸発観測用蛍光顕微鏡を構築し,ペリレン含有高分子液滴の蒸発過程における蛍光・重量変化の測定に基づき装置の評価を行った. 当初計画では,市販の実体顕微鏡のスタンドを改良し,試料ステージ部分に精密天秤を設置することを想定していたが,ズーム式顕微鏡に変更し,現有の天秤上で光軸設定可能なようにX-Yステージとともに組み込んだ.結晶状態の蛍光画像取得と蛍光スペクトル測定に成功している.しかしながら,励起光源として利用している既存のLEDでは,光量が弱いため,平成27年度には光源を購入し,より高感度に測定できるシステムへ発展させる予定である. 一方,分子系については,ジシアノスチリルベンゼン誘導体のニート膜における光誘起蛍光増強効果を新たに見出し,有機固体系における光照射にともなう配列形態変化ならびに結晶多形制御の可能性を示唆する結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りおおむね順調に進展しており,今後励起光源の改善によりS/Nの高いデータ取得をできる段階に到達している.また,関連する内容について論文発表を行った. さらに,有機固体系における光誘起蛍光増強効果を見出しており,結晶生成,相転移ならびに結晶多形の光制御の可能性を示唆しており,新たな研究展開も期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って着実に実験結果を重ねる.構築した蛍光顕微鏡と重量変化の同時測定により,溶解度と結晶生成初期過程との相関について,蛍光スペクトル変化に基づいて分子ダイナミクスの観点からより考察を深める.今後アボベンゾンフッ化ホウ素錯体での結晶多形の発現過程について検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,測定系の構築に専念し,現有の装置を組み合わせた試行実験を繰り返し,購入物品の検討を策定していたため,当初見込んだよりも物品費が安価で遂行できた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,平成27年度請求額と合わせて,励起光源ならび試料室一体型1回反射型全反射測定装置を購入するための経費に充てる.
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