レーザーアブレーション法とは、レーザー光を不揮発性の試料上に集光し、その構成物質を気相へと導く方法である。この方法は融点数千度といった高融点の物質を室温において気化させることができるため、含金属活性種の生成法としても広く利用されている。しかし、気相中に生成した金属原子やクラスターなどの反応性は、一般に考えてられているよりもかなり小さく、そのままでは試料ガスとの反応が起きない場合も少なくない。このような反応を起こさせるためには、反応をスタートさせるような何らかのトリガーが必要となる。このトリガーとしてパルス放電を用いるのが本研究で用いる「放電支援型レーザーアブレーション法」である。 本年度は、チオール類による貴金属ナノクラスターの安定化に対するモデルとして重要な「貴金属-硫黄活性種の安定性と反応性」に注目した研究を行った。まず、最近新たな知見が得られた「金-硫黄活性種」についてさらに詳しい実験を行い、これまでに観測した3つの化学種のほか、新たに未知の金を含む活性種のスペクトル線を多数観測した。これらについては、現在化学種の同定作業を進めている。また、金化学種で得られた知見を、「銀-硫黄活性種」「銅-硫黄活性種」にフィードバックさせたところ、金化学種の場合と同様な反応が進行していることを確認した。これらの中で、金化学種のスペクトルが最も強く、金を含む系が最も反応が進行しやすいことが明らかになった。現在、これらの結果について論文投稿準備中である。
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