研究課題
本研究の大きな目的は申請者らが開発してきたラマン円偏光二色性分光装置の更なる高感度化と、生命科学における重要課題への適用である。本手法は円二色性分光(いわゆるCD)のラマン分光版で、通常のラマン分光に比べて極めて多くの構造情報を提供する。特に溶液中では平面構造の分子がタンパク質中ではキラルな非平面構造になることに注目し、活性中心である補欠分子の構造的な歪みを検出できることを示してきた。本研究では我々が開発した装置の飛躍的な性能向上を図るとともに、光受容タンパク質における中間体の構造解析に挑戦する。平成28年度においては、青色光センサータンパク質のイエロープロテイン(Photoactive Yellow Protein)について、同位体標識した発色団を再構成した試料を合成し、そのラマン円偏光二色性スペクトルを測定した。その結果、発色団エチレン部位のC-H面外変角振動モードの帰属に成功した。またテトラアラニンの系についてラマン円偏光二色性スペクトルを測定した。さらに分子動力学計算と量子化学計算を併用した解析からスペクトルの解析を行い、主なバンドの帰属に成功した。またシアノバクテリアと呼ばれる光合成をする微生物において、光合成系タンパク質の保護機能をもったオレンジ・カロテノイドタンパク質について、暗状態と光反応中間体のラマン円偏光二色性スペクトルを測定することに成功した。その結果、このタンパク質の光反応機構を明らかにすることができた。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://biophysics.chem.saga-u.ac.jp/