研究課題/領域番号 |
26410021
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松岡 秀人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 客員准教授 (90414002)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光合成 / 電子スピン共鳴 / 高周波ESR / 単結晶 |
研究実績の概要 |
太陽エネルギーの有効活用と関連して、光合成反応機構の分子論的解明を目指した研究が、近年ますます重要となってきている。本研究では、光合成反応における中間体の電子・分子構造等を明らかにする上で有用な研究手法のひとつである電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)分光法を用い、光合成において最も重要な水分解-酸素発生過程を直接触媒するMnクラスターの中間酸化状態を選択的に観測し、それらの電子・分子構造を明らかにすることを目的としている。本年度はその目的遂行のためまず、国内で唯一であり、世界的にも最高性能を有する我々の高時間分解高周波(95GHz)パルスESR装置の更なる改良を行った。ESR共振器内での高効率な光照射は、高周波ESR分光器を用いた水分解-酸素発生過程の研究において不可欠であるが、既存の共振器は光学窓を有していないため、光ファイバーで誘導したレーザー光を共振器(試料)直上から照射せざるをえない。しかし、より高効率な光照射には、共振器の横側に作製した光学窓からの励起が有効と考えられる。高周波ESRの共振器は容積が小さく、微小な穴でもマイクロ波の漏れが大きくなるためESR測定感度の低下を招く。そこでまず最適な穴径を理論計算から推定し、その後実際の測定から径の最適化を行った。また、共振器に用いる材質、加工後の研磨過程を改良することで、光学窓(穴)作製による測定感度の低下を回避した。その結果、光照射効率は3倍以上向上させることができた。さらに、水分解-酸素発生中心のMn核および配位水分子の微視的情報を得るため、高感度なESRと高分解なNMRの同時測定を可能とするESR-NMR測定システムの構築を目的として、本年度はまずLabVIEWプログラムをベースとしたパルスマイクロ波ブリッジ制御プログラムの改良を行い、標準試料の測定を終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、光照射の高効率化、および共振器に用いる材質の検証による感度の向上は達成できた。しかし当該年度中に、ドイツのグループが光合成溶液を対象に同様の測定を行いScience誌に報告した結果から、単結晶の測定には更なる光照射の高効率化と感度の向上が必要であることが明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
光照射の高効率化には、光ファイバーの加工工程を改良するとともに、共振器への結合度の向上を行う。また、光ファイバーの材質そのものの再検討も行う。測定感度の向上には、共振器に用いる材質の改良、および加工精度の向上を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中に他研究機関のグループらによって報告された文献から、装置改良に用いる材質の再検討が必要となり、その選定に時間がかかったため、次年度に使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最適な材質の選定後、装置の改良を継続して行うが、この改良は次年度に予定している装置改良とも関連しており、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用し、研究遂行を継続する予定である。
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