研究課題
光合成は、天然の太陽光エネルギー変換システムであり、その反応機構の解明、ならびに応用は、近年ますます重要性を増している。電子スピン磁気共鳴(ESR)は、かなり古くから光合成研究に用いられてきた研究手法であり、本研究でも主要な実験法として用いてきた。特に、超高感度・高分解の高周波(94GHz)ESRは、光合成研究に欠かすことができない。しかし、高周波ESRの共振器は、光照射のための窓を有していないことが一般的であり、光照射効率が悪い。本研究では、理論および実験から、測定に影響を及ぼさない最適な光照射用窓を作成し、光ファイバーを用いた高効率光照射を実現した。その有用性は、標準試料(C60フラーレンおよび亜鉛ポルフィリン)を用いて確認し、さらに光合成タンパク質に対しても応用し、確認した。また、パルス化したマイクロ波を用いるパルスESR法は、マイクロ波による飽和回避や、任意の情報を選択的に得るために不可欠であるが、日本国内で高時間分解能を有する94GHz ESRは皆無であった。自作のパルス制御システムを構築するとともに、高出力マイクロ波発振器を導入することで、これを実現した。その有用性は、標準試料(水分子が配位したマンガン錯体)を用いて行い、高感度での信号の観測、ならびに配位子であるプロトンのNMR信号のESR観測(EDNMR: ESR-detected NMR)を実現した。これを光合成タンパクに応用し、酸素発生中心マンガンクラスターのパルスESR信号を、高効率で観測することに成功した。さらには、S2状態にあるマンガンクラスターに対して、初めて高周波でのEDNMR観測に成功した。また対象とする系は、凍結溶液試料のみならず、配向情報が得られる結晶試料に対しても初めて成功した。さらに、人工の光エネルギー変換システムである太陽電池および有機半導体にESR研究も実現した。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
J. Phys. Chem. Lett.
巻: 7 ページ: 4802
10.1021/acs.jpclett.6b01907
Chem. Eur. J.
巻: 22 ページ: 10102
10.1002/chem.201504900
Bull. Chem. Soc. Jpn.
巻: 89 ページ: 378
10.1246/bcsj.20150400
巻: 22 ページ: 12113
10.1002/chem.201601897