エレクトロスプレーイオン化(ESI)により気相化した色素分子のポンプ-プローブ実験を行った。色素分子の660 nm光吸収をパルスレーザーによるキャビティリングダウン分光でプローブし、同時にCWレーザーを照射することで光吸収の漂白を試みたが、期待された結果は得られなかった。しかし本実験を行う過程で、ESIニードル先端への光照射による液滴破砕の可能性を示唆する結果が得られ、液滴化学研究への応用に適用できるセレンディピティと期待される。 3-ブチン-2-オール(3B2O)クラスターを対象にして、ラセミ体と純R体での生成過程からキラル認識を検討した。OH伸縮振動を観測すると、純R体では2および3量体のバンドが強く現れるのに対し、ラセミ体では4量体以上のものが高強度であった。この結果は、クラスターサイズの増大に伴いラセミ化が優先されることを示唆する。 超音速ジェット中にアセチレン-トリエチルシランクラスターを生成し、赤外分光によりCH伸縮振動を観測した。アセチレン単量体より22 および37 cm-1だけレッドシフトしたバンドが観測され、密度汎関数計算との照合によりC-H…H-Si型の二水素結合で形成された1-1および2-1クラスターと帰属した。電荷移動相互作用の解析により、2-1クラスターでのC-H…π水素結合が二水素結合を弱くしていることが解明された。 ジェット冷却されたピロール-アセトン巨大クラスターのNH伸縮振動を観測し、溶媒和構造のサイズ依存性を解明した。巨大クラスターに由来する幅50 cm-1超のバンドに二次元相関分光を適用すると、これが二種類のNH振動の重ね合わせであることがわかった。クラスター生成の試料ガス濃度依存性から、一つは閉環ピロールクラスターへの溶媒和、他方はピロール単量体への多量アセトン溶媒和であると結論した。
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