本研究は,ナノ構造体が発現する光学活性の機構と特性を,微視的なレベルから明らかにするものである。ナノスケールの分解能を有した独自の光学活性検出法を用い,ナノ構造体のどのような形状,そして構造内部のどこの部位が光学活性の発現に寄与するのかを解明する。さらに光学活性の起源となるナノ空間の局所光電場の特性と構造を既知とすることにより,この局所光電場を利用した検出や励起への応用も期待される。 まず,平成28年度に行った研究の概要を以下に記す。 これまでに確立した形状の異方性に起因する誤差要因(直線二色性など)を低減できる観察手法を,近接場測定に対応できるようにした。ただし,近接場プローブやナノ構造試料の厚みに起因する問題が生じているため,当初,想定したような信頼性を確保した近接場測定を実現できていない。 一方,近接場方式ではない,円二色性顕微鏡については,サブμm以下の高い空間分解能と高いCDの検出感度(光学密度で0.0001,楕円率でmdeg程度)の両方を同時に実現することができるようになった。これにより,結晶のキラリティを単一微粒子レベルで分析することや,生体細胞内の染色体などにおけるキラリティの空間分布の観察が行えるようになりつつある。 また,光学活性領域周辺のねじれた光局在電場を利用した物質系との相互作用への展開については,ナノ構造体配列試料とマイクロ流路を組み合わせたデバイスが完成し,現在,テスト実験を着手できる段階に到達した。これについては,継続して研究を進めたいと考えている。
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