粉末X線回折により、メタンと同様の四面体構造のハイドロフルオロカーボをゲスト分子として包接するI型構造ガスハイドレート、および、メタンとプロパノールをゲスト分子として包接するⅡ型構造ガスハイドレートに関し、粉末X線回折による精密構造解析を実施した。大気圧でもガスハイドレート結晶が安定な低温(約-100~-180℃)で粉末X線回折測定を行うことにより、結晶構造解析を行った。 ハイドロフルオロカーボのガスハイドレートの構造解析結果から、ゲスト分子の種類とケージ構造、さらには単位胞サイズとの間には相関関係があることが示された。ただ、この関係は従来から考えられていたようなゲスト分子サイズといった単純なものではなく、ケージを構成する水分子とゲスト分子との相互作用に大きく依存することが、初めて実験的に示された。 メタンと1-プロパノールもしくは2-プロパノールとを含む混合ガスハイドレートに関し、初期構造モデルの無い状態から、直接空間法とリートベルト法を用いた解析により、水分子で構成されるケージ構造中におけるゲスト分子の占有率、平均分布位置を明らかにすることができた。メタン+2-プロパノール混合ハイドレートの場合、温度低下させるとケージ内における2-プロパノールの分布位置の変化と、結晶構造が立方晶から正方晶へと相転移することが明らかとなった。Ⅰ、Ⅱ型構造のガスハイドレートが温度低下にともない、他の結晶構造へと構造相転移を起こすことは、従来、Ⅱ型のテトラハイドロフラン(THF)ハイドレートでの極低温(~数K)での報告例のみである。しかし、低温相の結晶構造とゲスト分子のケージ内における分布を明らかにしたものはこれまでに報告例が無く、今回の結果が世界で初めてのものである。 これら一連の研究成果は、ガスハイドレートにおけるホスト-ゲストの相互作用の理解において、非常に重要な結果といえる。
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