研究実績の概要 |
平成28年度に新規に合成した電荷移動型SAMs用分子群を用いた三種類の有機電子デバイスの作製を行った。有機薄膜トランジスタ(TFT),有機エレクトロルミネッセンス(EL)については,すでに申請者らが確立している手法により作製し,有機半導体の界面空間制御が実現できることが明らかとなった。また,今回初めて取り組んだ有機薄膜太陽電池(PV)の試作にについては,ガラス基板上にITO透明電極(正極)を形成したものを用い,その表面を合成した電荷移動型SAMsで修飾した。蒸着型と塗布型の二種のデバイスは,蒸着型については,バルクヘテロ接合(p-i-n接合)とし,電荷移動型SAMsで修飾したITO透明電極表面に正極輸送層としてPEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン;ポリスチレンスルホン酸)を塗布し,続いての光電変換層は,三層のバルクヘテロ接合とし,CuPc(銅フタロシアニン)/CuPc:C60/C60(フラーレン)の三層を順次蒸着した。続いて,励起子拡散を防止するための有機緩衝層(Buffer層)として,BCP(バトクプロイン)を蒸着し,最後にSAMs処理後,Al電極(負極)を蒸着配置した。一方,塗布型は,電荷移動型SAMsで修飾したITO透明電極表面に正極輸送層としてPEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン;ポリスチレンスルホン酸)を塗布形成し,その上に可溶性フラーレンであるPCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル)とP3HT(ポリ-3-ヘキシルチオフェン)をブレンドした塗布溶液により光電変換層を形成し,最後にSAMs処理後,Al電極(負極)を蒸着配置した。いずれの有機PVも試作品としては十分な太陽電池性能を発現するに至った。
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