研究課題/領域番号 |
26410038
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐瀬 祥平 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90515165)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | N-複素環カルベン / 二酸化炭素固定 / ペルオキソカルボナート |
研究実績の概要 |
メタフェニレンドンドリマー骨格を基盤としたキャビティ型カルベン配位子を有するPd(II)ペルオキソカルボナート錯体と種々の試剤との反応について検討した。まず、電子不足なアルケン、アルキン類との反応を行った。Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体とテトラシアノエチレン(TCNE)との反応を検討したところ、ペルオキソカルボナート錯体から二酸化炭素が脱離し、TCNEが挿入した5員環メタラサイクルが得られることがわかった。また、アセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)との反応でも同様に、二酸化炭素が脱離し、DMADが挿入した5員環メタラサイクルが得られた。以上のように、電子不足な炭素ー炭素不飽和化合物との反応では、目的とする二酸化炭素の固定化よりも、脱離の方が優先して起こることが明らかとなった。なお、Pd(II)ペルオキソ錯体は、TCNE、DMADとの反応で同様の5員環メタラサイクルを与えることが報告されており、これら試剤に対する反応性はペルオキソ錯体とペルオキソカルボナート錯体とで類似しているといえる。次に、ホウ素化合物との反応について検討した。まだ予備的な段階ではあるが、Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体とフェニルボロン酸との反応を行ったところ、C-B結合が酸化されたフェノールが中程度の収率にて得られることが分かった。なお、アミン、アルコールとの反応についても検討したが、反応は進行しなかった。これらの結果は、Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体が、求核的な酸化剤として振る舞うことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体と、電子不足なアルケン・アルキン類との反応、およびホウ素化合物との反応について検討を行った。前者の炭素-炭素不飽和化合物との反応は、二酸化炭素部位の固定化を目的として行ったが、予期せず二酸化炭素部位の脱離が速やかにおこることが明らかとなった。現時点で、本研究の目的である環状カルボナートの生成は確認できていないため、当初の予定からは遅れていると考えられる。その一方で、Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体が、C-B結合を酸化する程度の酸化能を有することが明らかとなった。これは、昨年度に明らかにしたスルホキシドの酸化反応と関連して、ペルオキソカルボナート錯体の酸化剤としての機能の一端を見出したものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体を二酸化炭素固定化反応に適用するべく、カルボナート部位を活性化できるような添加剤の探索に主眼を置いて検討する。まずは、種々のアルケン、アルキン類との反応を添加剤存在下で検討する予定である。その後、触媒反応への展開についても検討する。また、本年度見出したボロン酸の酸化反応、および昨年度見出したスルホキシドの酸化反応に関連して、Pd(II)ペルオキソカルボナート錯体の酸化剤としての機能について焦点を当てた検討も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画当初に予定していた国際学会への参加をスケジュールの都合で見送ったこと、およびガラス器具が当初予定していたよりも安価に購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した分は、主に来年度に参加する国際学会(ドイツ、Jena)に使用する予定である。
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