研究課題/領域番号 |
26410039
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
樋口 弘行 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (00165094)
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研究分担者 |
吉野 惇郎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (70553353)
林 直人 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (90281104)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポルフィリン / ジアセチレン / 可逆的変換 / π電子 / ルイス塩基 / スペーサー / スペクトル / 拡張共役系 |
研究実績の概要 |
本研究は,独自の分子設計により構築した分子システムについて,外部刺激に対し安定的かつ可逆的な電子構造変換が可能なナノサイズのポルフィリン(Por)誘導体を合成し,それらの構造物性相関に基づいて,Por に特有の電子的機能性を自在に調整および制御する手法を確立することが目的である。そして,高精度の調整制御手法を確立することだけでなく,この可逆的機能変換システムを完成させ,光スイッチや高密度メモリーなど一層の省エネルギー型生活支援素子創出のための発展的研究に繋げることが,本研究課題の目標である。 平成27年度(本課題研究二年目)は,上述の目標達成指針に基づき,Por 成分と外部刺激伝達の調整制御を担うスペーサー(Spc)成分,またプロトン化応答成分であるルイス塩基(LB)の3成分から構成される拡張共役系 Por-Spc-LB について,新規に8種の誘導体を合成し,それらの基本物性を精査した。その結果,酸への応答感度や可逆的安定性の向上に関して,なるべく共鳴エネルギーの小さな Spc 成分,窒素原子上の孤立電子対が拡張共役系には関与しない LB 成分を選択することが有効であることを確認した。LB へプロトン化する外部刺激(正電荷の導入)が引き金となり,その影響が Spc を経由して拡張共役系末端の Por の電子物性に伝達される機構であり,これに連動する種々のスペクトル上で特異性となって現れる。また,外部刺激が除去されると元のスペクトルを再現する可逆システムの作用機構を一般化することができた。 センサーやメモリー機能要素の賦与を念頭に,このシステムの一般的機能性に基づき,次年度への展開課題として,外部刺激に対する感度や可逆的安定性に加えて変動幅のより大きな視覚化条件も考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究を平成26年度に開始し,既述のように,Por とSpc と LB の3成分を,剛直でπ電子共役にも関与するジアセチレン結合で連結した拡張共役系 Por-Spc-LB について,これ迄に合計12個の関連誘導体を合成し,構造活性相関の観点から,それらの基本物性を精査した上で,外部刺激に対する本誘導体の応答性について,その一般性とともに方針通りに絞り込めていることを確かめている。そして,構造物性の可逆的変化に関する種々の評価要素について,定量的な考察を行って来た。 その結果,本拡張共役 Por 誘導体の機能性(感度,可逆性,スペクトル変動幅等)向上のために,Spc 及び LB の成分について,構造要素の選択及び設計のための指針を絞り込むことができた。これらの成果を纏め,論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の研究成果から,拡張共役系 Por-Spc-LB の可逆的外部刺激応答性向上のために, Spc としては共鳴エネルギーのより小さな成分,LB としては窒素原子上の孤立電子対がベンゼン環のような限られた環内での非局在化が可能な成分が有効であることを見出した。並行して,関連する Por-Spc-Por 系誘導体に関する研究において採用して来た Spc (キュバン,ジヘキシルビチオフェン,ベンゼン,アントラセン等)の中で,両端 Por 間の相互作用にはアントラセンが電子伝達効率に優れており,しかも位置異性体間での差異,すなわちアントラセン環の連結位置によってプロトンに対する感度や可逆的安定性等に大きな影響が現れることを見出した。中でも,9,10-位で連結したアントラセン(9,10Anth)環は,本システムにも優れた Spc 特性を発現することがわかった。また,LB(ピリミジン,ピリジン,アニリン等)の中ではアニリン系,特にmeta -置換アニリン体(mAnl)が,システムとしてより高感度および高い可逆的安定性を示すことも見出した。よって,最終28年度は,9,10Anth を Spc とし,mAnl 類を LB とする新たな誘導体(LB-9,10Anth-mAnl)を設計し,それらの高感度可逆的機能性システム構築のための構造要素を実証し完成させる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究課題推進に際して,拡張共役系 Por-Spc-LB の最終的な構造体に指向し,全16個の誘導体を合成する計画である。27年度には10個の誘導体を合成計画したが,8個の誘導体を合成した時点で,その段階で得られた誘導体の構造物性に関する情報及び知見の新奇性と重要性に基づき,次年度の展開を見据えて,構造物性相関を定量的に精査する作業の方を優先させることにした。この考察によって,当初の合成計画をしていた残りの8個の誘導体については若干の分子設計の修正を行い,28年度にそれらの合成および物性評価を精査する計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し研究費の使途については,当該拡張共役系システム Por-Spc-LBの最終構造体を目指し,当初の計画に沿って,既に進行中である未合成誘導体4個(分子設計修正済み)の構築に必要な物品費に充てる予定である。 また,28年度研究費については,26年度から2年間の成果に基づいて,新たな分子骨格をもつポルフィリン誘導体の合成に必要な試薬,溶媒,ガラス器具及び分離精製用シリカゲル等の購入のための物品費を計上する。更に,研究推進途上に生じる課題解決や先端技術の習得などに関する専門書の購入も一部計上している。更に,得られる研究成果を学会や学術誌に発表するとともに,当該研究分野周辺の情報収集も積極的に行う計画であり,そのために必要な旅費を一部計上する計画である。
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