研究課題/領域番号 |
26410040
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
前多 肇 金沢大学, 物質化学系, 教授 (40295720)
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研究分担者 |
千木 昌人 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90135046)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ピレン / スチルベン / ケイ素官能基 / クラウンエーテル / 光反応 / 蛍光センサー / 蛍光量子収率 / 擬ロタキサン |
研究実績の概要 |
含ケイ素芳香族化合物を鍵骨格とする強発光性蛍光センサーの開発を目的として研究を行い、以下の知見を得た。 1. トリメチルシリルエチニル基およびtert-ブチルエチニル基を複数個導入したピレン誘導体の1位に様々な置換基を導入し、それらの置換基が吸収・蛍光特性に与える効果について調べた。その結果、特にホルミル基を導入した化合物の蛍光は溶媒依存性を示し、極性溶媒ほど長波長側に現れた。また、トリメチルシリルエチニルピレン類とtert-ブチルエチニルピレン類の蛍光量子収率を比較すると、合成した化合物の全てにおいて、トリメチルシリルエチニルピレン類の方が高いことが分かった。 2. trans-スチルベンにケイ素官能基を導入した化合物群を合成し、ケイ素官能基が構造、蛍光、光反応性にどのような影響を与えるかについて調査した。その結果、ケイ素官能基の導入により、吸収・蛍光ともに長波長側へシフトし、蛍光量子収率が増大した。特に両方のパラ位にトリメチルシリルエチニル基を持つ化合物は、高い蛍光量子収率(0.95)を示し、その片方をジフェニルアミノ基に変えた化合物では、可視光領域におけるソルバトフルオロクロミズムを観測することができた。 3. 光反応を用いる蛍光センサーの開発を目指し、1-ビニルピレン類の分子内光二量化反応を行った。その結果、対応する分子内光二量体が効率よく生成し、蛍光が短波長シフトすることが明らかになった。 4. アンモニウム塩を認識する蛍光センサーの開発を目指し、24-クラウン-6エーテル部位を有する(1,3)ピレノファンとジアルキルアンモニウムイオンとの錯形成について検討した。その結果、擬ロタキサンが1:1錯体として生成し、蛍光が水色から紫色へと可逆的に変化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、様々な含ケイ素芳香族化合物の希薄溶液中または固体状態における蛍光に関するデータが得られたため、蛍光の波長(色)の自在な制御と高い発光強度を得るための分子設計指針の見通しが立った。また、溶媒、アンモニウム塩、光反応によって応答する蛍光センサー分子の開発に成功した。蛍光の長波長化を達成する手段として、多環式芳香族化合物の分子内エキシマー発光またはジフェニルアミノ基の導入によるソルバトフルオロクロミズムを利用する分子設計が有効であることが分かった。以上の結果、達成度としては、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、ゲスト分子となり得る金属イオン、有機塩、有機化合物の添加により蛍光特性が変化するスイッチ分子の開発を行う。また、可逆的光反応系を利用する蛍光センサーの開発を進めるため、分子内光環化付加反応の検討を行う。蛍光の長波長化については、分子内エキシマー発光およびソルバトフルオロクロミズムを利用するとともに、共役系が拡張するような置換基の導入を行い、極めて強い赤色発光を示す分子の開発を行う。また、求核剤認識センサーや円偏光蛍光を示す分子の開発にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費を支出するにあたり、端数が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金と合わせ、物品費、旅費、その他費として使用する計画である。
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