研究実績の概要 |
含ケイ素芳香族化合物を鍵骨格とする強発光性蛍光センサーの開発を目的として研究を行い、以下の知見を得た。 1. ケイ素官能基の導入による強発光性分子の構築を目指して、各種シリル基およびシリルエチニル基をスチルベンおよびフェナントレンに導入した化合物群を合成し、その吸収・蛍光特性を調べた。その結果、シリル基およびシリルエチニル基の導入に伴い、モル吸光係数と蛍光量子収率が増大し、特にペンタメチルジシリル基やトリメチルシリルエチニル基を導入した場合、その効果が大きいことが分かった。単結晶X線結晶構造解析、分子軌道計算、吸収・蛍光の溶媒効果、光化学反応の生成物解析により、分子構造と吸収・発光機構に関する重要な知見を得ることに成功した。 2. 蛍光センサー分子の強発光性発色団部位として様々なピレノファン類を合成し、添加物、溶媒、温度による蛍光波長と蛍光強度の変化、およびその可逆性を調べた。(1,3)ピレノファンでは、金属イオン、アンモニウム塩、溶媒、温度によってピレンのモノマー発光とエキシマー発光が可逆的に変化する蛍光センサー特性が現れた。(1,8)ピレノファンでも(1,3)ピレノファンと同様の特性が観測されるが、(1,3)ピレノファンに比べて結合鎖をやや伸ばす必要があることが分かった。(1,6)ピレノファンを含む溶液にバリウムイオンを添加すると、オリゴエチレングリコール鎖の長さに応じて1:1および1:2錯体を選択的に形成し、それぞれ特徴的な蛍光特性を示すことが分かった。メチレン鎖で架橋された対称性の高い(2,7)ピレノファンの合成にも成功し、単結晶X線結晶構造解析により、ゲスト分子包接能が高いことが明らかになった。
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