研究課題/領域番号 |
26410043
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茅原 栄一 京都大学, 化学研究所, 助教 (10610553)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シクロパラフェニレン / 曲面状π共役分子 / 環状π共役分子 / スズ / 芳香族化 / 歪み |
研究実績の概要 |
シクロパラフェニレン(CPP)は、近年その化学が大きく進展している。昨年度までに、研究代表者は、新しいCPPの合成経路の開発を行うことで、これまでに合成された中で最も環サイズが小さく、最も興味深い電子物性を持つ[5]CPPの初めての合成に成功している。 本年度は、[5]CPPを材料科学のリード化合物として用いることを考え、スケールアップを検討した。しかし、最終ステップの還元的芳香族化の再現性が悪く、50 mgを超えるサンプルの合成でさえ困難であった。そこで、この段階の条件について詳細に検討したところ、二塩化スズに2.0当量の塩酸を加えることで、室温、短時間、かつ再現性良く芳香族化が進行することを明らかにした。本手法を用いることで、2 gを超える[5]CPPの合成に成功した。さらに、この技術を民間企業に移転することで、[5]CPPを試薬として販売することに成功した。また、本手法を用いることで、[6]-[12]CPPを容易に合成出来たことから、本手法が実用的なCPPの合成法であることを明らかにした。 さらに、[5]CPPをはじめとしたCPPの変換反応について検討を行い、小さな環サイズに由来する特異な反応性を明らかにした。また、CPPと遷移金属の金属錯体の合成にも成功し、CPPの選択的な官能基化への利用や、特徴的な触媒機能や光、電子物性の発現といった観点から興味深い知見を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、CPPの実用的な合成法の開発に成功し、その合成法を用いることで、最も興味深い物性を持つ[5]CPPの大量合成に成功し、民間会社から市販化するに至ったため。また、物性解明、機能開拓等も順調に進行し、論文発表に至っているため。
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今後の研究の推進方策 |
入手が容易になったCPPを出発原料とした誘導化について検討を行い、様々なCPP誘導体を効率的かつ自由度高く合成出来る手法の開発について検討する予定である。
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