研究課題/領域番号 |
26410044
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水畑 吉行 京都大学, 化学研究所, 助教 (30437264)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ケイ素 / 芳香族性 / 反芳香族性 / デヒドロアヌレン |
研究実績の概要 |
環状骨格に(Z)-ジエチニルジシレン構造を導入した分子の合成を指向し、前駆体として二つのアルキニルジハロシランおよびアルキニルトリシラン部位を架橋した分子を設計・合成し、その還元および光分解反応を検討した。 アルキニルジハロシラン誘導体の還元においては、還元剤であるリチウムナフタレニドを用いて還元的カップリング反応を行ったところ、多くは高分子量成分であったが、反応混合物中から中員環構造を持つジシランを単離した。得られた環状ジシランの電子状態をDFT計算により検証した結果、HOMO-4の準位においてその軌道が10員環全体に広がっている特異な電子状態を有することが明らかとなった。この結果は、この10員環構造が特徴的なπ共役特性を引き出せる骨格であることを示しており、今後の共役系分子設計に新たな知見を与えたと考えている。 アルキニルトリシラン誘導体に関しては、シリレン捕捉剤であるトリエチルシラン共存下で低圧水銀灯による光分解反応を行った。その結果、アルキニル基の末端がトリメチルシリル化された化合物が生成した。この結果は反応系中にシリルシリレンが生成したことを強く示唆しており、これまでに報告されているアルキニルトリシラン誘導体の光分解の結果とは異なり、ジシランの脱離ではなくアルキニルシランの脱離が起こったことを示している。これはアルキニルジシランの光分解によるアルキニルシランの脱離およびシリレンの発生と類似していた。この結果は、2-アルキニルトリシラン類からのジシランの脱離がアルキニルシランの脱離と競争的であり、実験条件もしくは置換基のわずかな違いにより選択性が異なることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的分子の合成を達成するために、その基本骨格となる環状(Z)-ジエチニルジシレン構造の構築を目指したが、ケイ素部分だけでなく、エチニル基に起因した副反応のために、目的には到達していない。
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今後の研究の推進方策 |
ケイ素間結合形成を、合成計画の中途ではなく初期段階で行う方法に改める。ケイ素ーケイ素間単結合を有する前駆体からの合成を進め、環状(Z)-ジエチニルジシレンおよび含ケイ素デヒドロアヌレンの合成を達成したいと考えている。
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