研究実績の概要 |
2つの異なるエノラート種の分子間酸化的クロスカップリング反応は、非対称1,4-ジカルボニル化合物を合成する最も直接的な合成法の一つであるが、ホモカップリング体の副生が課題である。また、生成物における立体制御や反応の触媒化も容易ではなく、挑戦的な反応の一つとなっている。本研究では、エノラート種の対カチオン金属種による反応性の変化を活用した選択的反応の開発を目的としている。また、末端酸化剤として分子状酸素を用いた金属酸化剤の触媒化も目指している。 これまで見出してきたボロンエノラートとシリルエノラートの高原子価金属酸化剤による酸化的クロスカップリング反応について、分子状酸素を末端酸化剤とする金属酸化剤の触媒化について検討を進めた。昨年度見出したバナジウム(V)について、触媒量の低減やメカニズムについて検討したが、多くの進展が見られなかった。そこで、あらためて触媒として様々な金属種を調査した。金属酸化剤なしで分子状酸素雰囲気下、本酸化的クロスカップリング反応を行った場合、反応はほとんど進行しなかった。金属酸化剤として、銅塩や鉄塩の触媒も試した。しかしながら、バナジウム(V)触媒には及ばない結果となった。バナジウム(V)触媒を用いた場合は、望まない酸化的ホモカップリング生成物に関して、ボロンエノラート同士もシリルエノラート同士もいずれもほとんど観測されず、非常に高いクロスカップリング選択性が示された。
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