研究実績の概要 |
Tishchenko反応は1887年にClaisenに発見された反応であり、数多くの報告がされている。我々は室温で進行し、最も基質一般性のあるTishchenko反応を報告した(synlett,2005,1450)。しかし、その応用としてメソジアルデヒドの分子内不斉Tishchenko反応の成功例はなかった。メソ1,2-ジアルデヒドを基質に用い、分子内不斉Tishchenko反応を試したところ、90%ee以上でラクトン体が得られた。これは世界初の分子内不斉Tishchenko反応の成功例である。 今年度は得られたラクトン体の生成メカニズムを考察するため、得られたラクトン体の絶対配置の決定を行った。ラクトン体を酸性条件下で脱保護し、ラクトンジオールに導いた後、モノベンジル化を行い、得られた2種類のモノベンジル体を分離し、ヒドロキシメチル基を酸化し、カルボン酸へ導いた後、脱炭酸により既知のラクトン体へ導き絶対配置を決定した。その結果、保護基がエナンチオ場選択に大きな影響を示すことが示唆された。
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