研究実績の概要 |
効率的及び選択的結合形成反応の探索は、有機合成化学において、重要な課題である。資源の有効利用などの観点から、有用物質を効率的かつ選択的に合成する新規反応の開発が望まれる。生物活性を示す物質や機能性物質に含まれる基本骨格ヘテロ環の新規効率的合成反応の開拓研究を行なった。これまでの研究で共役付加における高い反応性および有用性が明らかになってきたエテントリカルボン修飾誘導体のアルケン部分の反応の新規な活用法の展開を研究した。 エテントリカルボン酸ジエステルとシンナミルアミンとのアミド縮合反応条件で、連続的な種々のピロリジン環化反応が起こった。芳香族上の無置換, p-F, Cl, Br, OMe置換シンナミルアミンでは、THF中、共役付加を鍵段階とする分子内[2+2]環化付加により、シクロブタン縮環ピロリジンが得られた。溶媒を1,2-ジクロロエタンを用いたとき80 °Cでδ-ラクトン縮環ピロリジンが生成した。さらに、 p-NMe2置換シンナミルアミンでは、HOBt付加ピロリジンが得られた。また、m-NO2置換シンナミルアミンでは、HOBt付加ピロリジンが立体選択的に得られた。一方、o,p-NO2, p-CO2Me, CO2Et, CN, CF3置換シンナミルアミンでは、分子内[4+2]環化付加(Diels-Alder)/H+移動により、三環性化合物が得られる新規な効率的反応が見つかった。これらの反応形式の違いの要因を考察している。スチリル基のヘテロ芳香族であるフラン類似体についても検討したところ、立体化学の異なる分子内[4+2]環化付加が起こった。フラン類似体では[4+2]環化付加が共役付加を経て段階的に起こった可能性がある。反応機構の詳細について現在検討中である。 以上の環化生成物は生物活性を示す化合物や新機能性物質に変換できる可能性があり、有用な反応が開発できたと言える。
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