研究課題/領域番号 |
26410049
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
水野 一彦 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (10109879)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 含窒素ヘテロ環化合物 / 分子内光環化反応 / フロー系マイクロリアクター / 光誘起電子移動反応 / エキシプレックス / FEPチューブ |
研究実績の概要 |
分子内に窒素または酸素を含む数種の化合物を合成し,フロー系マイクロリアクター(1 mmΦ,長さ2 mのフッ素化されたエチレンポリマー(FEP)チューブ)とバッチ型反応器(10 mmΦのガラス管)を用いたこれらの化合物の分子内光環化反応を比較検討した。(1) 9-(3-アニリノプロピル)フェナントレンならびに9-(5-アニリノペンチル)フェナントレンのベンゼン溶液にPyrexフィルターを用いて>280 nm光を照射すると,いずれも9位でアニリノ基がスピロ型に閉環した化合物がほぼ定量的に生成した。しかし,反応効率は著しく異なり,同じ光源を用いた場合,バッチ系では2時間以上要したのに比べ,フロー系では5分以内で完結した。今後,濃度効果,溶媒効果などについて詳細に検討する。(2) ナフタレンの2位にN-メチルアミノメチル基,1位に9-フェナントリル基をもつ化合物に直接光照射しても反応しなかったが,1,3-ジシアノベンゼンを共存させ,アセトニトリル中で光照射すると,分子内で光アミノ化したと思われる付加体が得られた。(3) N-(o-クロロベンジル)-1-ナフチルアミンを含むアセトニトリル溶液に3N水酸化ナトリウム水溶液を加え,バッチ式で光照射するとゆっくりと原料物質が消失した。現在,反応物の単離精製を試みている。(4) o-クロロベンザル-4-メトキシアニリンのアセトニトリル溶液に光照射し,フェナンスリジン誘導体の単離を試みた。しかし,現時点では分子内付加体の単離にはいたっていない。また,この反応系に水素化ホウ素ナトリウムを共存させ,同様に光照射したが複雑な化合物を与えた。(5) 2-(5-メチル-2-オキサ-4-ヘキセニル)ナフタレンのアセトニトリル溶液に少量の1,4-ジシアノナフタレンを加えて光照射すると,少量ではあるが,分子内[2+2]環化付加体が生成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出発原料の合成にかなりの時間を費やし,光源,シリンジポンプなど反応装置の設定にも手間取ったため,マイクロリアクターを用いる光反応の実施が予定より大幅に遅れた。そのため,適切な光反応の条件を捜すことに時間を費やした。現在,フロー系マイクロリアクターを用いる新規なヘテロ環化合物の合成を目指して,遅れを取り戻すべく努力している。なお,予備的ではあるがいくつか興味深い結果を見出しており,個々の光反応生成物の単離・構造決定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
窒素または酸素を含むいくつかの化合物を合成できたので,順次これらを用いた光化学反応を行っていく。また,電子移動の特性を活かした新規光化学反応の開発を目指すとともに,得られた化合物の構造決定を行う。加えて,フロー系マイクロリアクターとバッチ型反応容器との反応性の違いを確認する。
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