研究実績の概要 |
高効率・高選択的光化学反応の開発を目的として,フロー系マイクロリアクターを用いる光環化反応を検討した。分子内に窒素または酸素を含む8種類の化合物を合成し,フロー系マイクロリアクター(1mmΦ,長さ2 mのフッ素化されたエチレンプロピレン(FEP)チューブ)とバッチ型反応器(10 mmΦのPyrexガラス管)を用いて光反応性を比較した。(1)1-シアノナフタレンの2位とビニロキシ基をエチレングリコールユニット(n=1,2)で連結した化合物のベンゼン溶液にバッチ型反応器を用いて>280 nm光を照射した。その結果,n=1 のとき,シアノナフタレンの1,2-位で環化付加した化合物が生成したが,n=2 のときは全く反応せず,原料を回収した。現在,フロー系マイクロリアクターを用いて光反応を行っている。(2)フェナントレンの9位とアニリノ基をメチレン鎖(n=2~5)で連結した化合物の光照射では,n=3 および n=5 のとき,速やかに反応が進行し,9位でアニリノ基がスピロ型に閉環した化合物が高収率で生成した。反応速度は,バッチ系では反応終了までに2時間以上要したの比べ,フロー系では10分以内で反応が完結した。一方,n=2 の場合,メチレン鎖の切断が起こり,9-メチレン-9,10-ジヒドロフェナントレンを与えた。また,n=4 では,反応が極めて遅いことがわかった。(3)N-(o-クロロベンジル)アニリンならびにo-クロロベンザルアニリンの光反応によって,フェナンスリジンの合成を試みたが,現時点では単離にいたっていない。
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