研究課題/領域番号 |
26410050
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
中西 和郎 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80110807)
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研究分担者 |
林 聡子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (00294306)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 理論有機化学 / 有機典型元素 / 構造有機化学 / AIM解析 / 水素結合 / ファン・デル・ワールス相互作用 / X線結晶構造解析 / 拡張超原子価結合 |
研究実績の概要 |
物質科学を発展させ新規化合物を開拓するためには、弱い相互作用の本質を的確に解析・評価し、自在にかつ巧みに操ることが求められる。Baderが提案したAIM (Atoms-in-Molecules Method)は、化学結合および相互作用の特性を評価・分類できる方法として注目を集めてきた。実験化学者の立場から測定結果や物性を自身のイメージで解析を行うために、AIM二元関数解析法(AIM-DFA)を提唱し、相互作用全体を統一的に評価・分類できる基本的な解析法として確立してきた。しかし化学現象全体を有効に解析するためには、本法のより高度な解析法としての確立という課題が浮上した。本研究の目的は、AIM-DFAを物質科学の発展と新規物質創製に挑戦できる解析法として発展・確立することであり、具体的には、(1)相互作用の動的特性に関連して新規な摂動構造作成法を提案し、AIM-DFAをさらに高精度化し、(2)不安定化学種や結晶中の相互作用を含めて有効な解析法として確立することである。 AIM-DFAの提案当初は、相互作用の動的特性は着目する相互作用の周辺から受ける影響を加味して解析した方が良いと考えていた。しかし、動的特性は小さいながらも周辺からの影響に比例して変化するという解析結果が得られた。このことを踏まえて、平成26年度は、この結果研究の目的(1)に関連して、AIM-DFAを適用して相互作用の動的特性の解析する際、着目する相互作用の周辺からの影響を取り除いた形で相互作用の動的特性が解析できる新規摂動構造作成法の提案と確立を目指した。そこでCompliant force constantsに対応する基準座標(C-NIV) を用いて作成した摂動構造がこの目的を果たすために有効に機能するものと考え、新規摂動構造の作成のため、プログラムを工夫した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、(1)の課題に取り組んだ。AIM2元関数解析法を適用して相互作用の動的特性の解析する際、着目する相互作用の周辺からの影響を取り除いた(いわば絶対的な値として)形で相互作用の動的特性が解析できる新規摂動構造の作成法に取り組んだ。Compliant force constantsに対応する基準座標(C-NIV) を用いて作成する摂動構造がこの目的を果たすために有効に機能するものと期待した。多原子分子の場合、着目する相互作用運動は、周辺の運動による影響を受けるため、通常、着目する相互作用運動のみが自然な形で抽出されることは極めて稀である。この場合、周辺の運動による影響下にある相互作用の運動の力の定数は、本来の相互作用の値ではなく、周辺の運動の力の定数によって変化したものとなる。Compliant force constantとは、着目する相互作用の運動に関して本来の相互作用に由来する値が得られる様に数学的処理をしたものであるといえる。従ってその様な処理後の運動に対応する基準座標 (C-NIV) を用いて摂動構造を作成した場合、着目する相互作用の周辺からの影響を取り除いた形で相互作用の動的特性が解析できると期待された。 Compliant force constant の提案者であるドイツ ブラウンシュバイク工科大学の Grunenberg教授との共同研究として新規摂動構造の作成を進めた。データの打ち出し段階でプログラムに工夫を加える必要があり、概ねうまく行えたが、もう少し容易性などの微妙な調整が必要である。多環式化合物や多重水素結合系に、AIM2元関数解析法を適応しほぼ満足いく成果が得られた。現在報文にまとめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画で、完成に至らなかったCompliant force constantのプログラムを完成させ、その適用性をPOM法およびNIV法の結果と比較しつつ検討する。また当初計画の通り、平成27年度は、課題(2)を中心に、不安定化学種、特に遷移状態(TS)における相互作用の解析・評価を中心に研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
有機合成化学協会誌に発表した論文(AIM二元関数解析の基礎概念と応用:相互作用に関連した実験結果のよりよい理解と説明のために, 林 聡子・中西 和郎, 73, 39-52 (2015))の別刷り代として残しておいたが、年度内の支払いができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に発表する論文の別刷り代として使用するか、参考図書の購入代金として使用する予定である。
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