研究実績の概要 |
昨年度学会発表した、1) 2-(1-アジドアルキル)フェノール誘導体からの3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンズオキサジン誘導体合成、2) 2-ブロモベンジルアジド誘導体からの3-アシル-3,4-ジヒドロ-1,2,3-ベンゾトリアジン誘導体合成、3) 2-(アジドメチル)ベンゾエート誘導体からの3-アルコキシイソインドリノン誘導体合成については、実施例を増やし、反応機構などの細かい点の考察を行い、専門誌にて詳細を報告した。 2-[アリール(メトキシ)メチル]ベンジルアジド誘導体から、対応するイソチオシアナート誘導体を経て、第二級アミンと反応させチオ尿素誘導体とし、メタンスルホン酸で処理をし環化させる方法により、第三級1-アリール-1,3-ジヒドロイソインドール-3-カルボチオアミド誘導体が得られることを明らかにし、学会発表した。このタイプのイソインドール誘導体の合成はこれが初であり、医農薬創製のためのリード化合物として期待が持てる。 2-ブロモベンジルアジド誘導体を、トリフェニルホスフィンと反応させた後、芳香族カルボン酸塩化物を加えると、N-(2-ブロモベンジル)ベンズアミド誘導体が得られた。これらをブチルリチウムで処理すると、臭素/リチウム交換により発生したフェニルリチウム中間体が、アミドのカルボニルを攻撃することによる環化と、それに続く酸化が一挙に進行し、2-アリールイソインドリノン誘導体が得らることが明らかとなった。従来法では合成が難しかった誘導体を容易に合成できる点で合成的にも意義がある上に、反応機構的にも極めて興味ある新反応である。これについても、学会発表を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
第三級1-アリール-1,3-ジヒドロイソインドール-3-カルボチオアミド誘導体の合成および2-アリールイソインドリノン誘導体の合成について、さらに詳しく検討して、専門誌での公表に結びつけたい。 硫黄原子で安定化された炭素アニオンのアジドへの求核攻撃反応よる環化反応を用いた、4H-1,3-ベンゾチアジン誘導体の合成法の開発について検討を行いたい。 さらに、2位の窒素原子が第三級チオカルボアミド基で置換されたイソインドリノン誘導体や1,2-ジヒドロ-3H-2-ベンズアゼピン-3-チオン誘導体などの、従来法では合成が極めて困難な誘導体の合成法開発に挑みたい。
|