研究実績の概要 |
昨年度学会発表した、2-[アリール(メトキシ)メチル]ベンジルアジド誘導体からの第三級1-アリール-1,3-ジヒドロイソインドール-3-カルボチオアミド誘導体の合成に関しては、実施例を増やし、反応機構などの細かい点の検討をおこない、専門誌にて詳細を報告した。 同じく、昨年度学会発表した、2-ブロモベンジルアジド誘導体からの2-アルキル-3-アリールイソインドリン-1-オン誘導体の合成に関しても、実施例を増やし、反応機構などの細かい点の検討をおこなった。また、2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]イソインドール-1-オン骨格の合成にも応用できることを明らかにし、あわせて専門誌にて報告した。 アルファ水素を有する2-(アルキルスルホニル)ベンジルアジドをリチウムジイソプロピルアミド(LDA)で処理をすると、trans-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-アミン1,1-ジオキシド誘導体が生成することを見い出した。この生成物は、極性が高く、効率的な単離が難しかったため、N-アシル化体として単離した。この生成物の生成の機構を下記のように考察した。まず、2-(アルキルスルホニル)ベンジルアジドをLDAで処理した際、スルホニル基のアルファ位の水素ではなく、ベンジル位の水素が引き抜かれ、ベンジルアニオンが発生する。窒素が脱離し、ベンジリデンイミニドとなり、アニオンがスルホニル基のアルファ位に移動し、ベンジリデンイミニド部位はベンジリデンイミンとなる。スルホニル基のアルファアニオンがイミン炭素を分子内攻撃することにより環化し、2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-イルアミドアニオンとなり、これが水処理により2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-アミンとなる。立体化学は、反応機構と熱力学的安定性から考え、トランスであると推測している。現在、専門誌への投稿準備中である。
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